- 血尿
- 投稿者:医療法人 山下泌尿器科医院 院長 山下 拓郎
血尿とは尿の中に血液が混入した状態の総称です。ここでは血尿の分類と、血尿をきたす疾患にはどのようなものがあるか述べたいと思います。
*見た目で血尿とわかりますか?
混入した血液の量が多ければ、だれでも見ただけで尿の中に血液が混じっていることがわかります。このような血尿を肉眼的血尿と呼びます。
一方、混入している血液の量がごく微量で、見た目は普通の尿の色をしていますが、尿沈渣の顕微鏡検査をしてみてはじめて分かる血尿を顕微鏡的血尿といいます。
赤い尿がでたらだれでも驚きますが、尿の色は正常なのに血が混じっているといわれたらもっと驚かれることでしょう。健康診断や人間ドックで「あなたは血尿です、精密検査を受けてください。」といわれるのはほとんどがこの顕微鏡的血尿です。
また見た目には血尿のように見えるが実際には血液すなわち赤血球が混入していない場合があります。このような血尿以外の赤色尿は仮性血尿と呼ばれており、高熱、脱水による濃縮尿、ある種の薬剤による着色、異型輸血などで起こる溶血によって生じる血色素尿などがこれにあてはまります。
そこで「血尿がでた、血尿と言われた。」といって受診された場合、本当に血尿であるかどうかをまず診断しなければなりません。というのも、実はこの仮性血尿であったり、痔出血の血が便器の尿に混入したものであったり、あるいは女性の場合は生理時の血や膣からの血液が尿に混入したりして血尿と間違うことがあるからです。血尿と思われる場合でも尿(女性の場合はカテーテル尿)の顕微鏡検査をして赤血球の存在を確認することが重要となり、特に潜血反応試験紙だけで血尿と診断された場合はこの確認が必要となります。
*何か症状がありますか?
次に何か症状を伴っているか、いないかの違いによる分類があります。
症候性血尿
これは痛みなどのなんらかの症状を伴い血尿がある状態で、尿路結石や膀胱炎などでみられ、血尿の原因は良性疾患であることが多いです。
無症候性血尿
この血尿は尿路悪性腫瘍と最も関連が深いものです。すなわち、痛くもかゆくもなく、真っ赤なまたは濃い茶色の血尿がでる状態で、膀胱ガン、尿管ガン、腎細胞ガンが隠されている可能性が非常に高くなります。もちろん検査をしてもなにもみつからず、特発性良性血尿の場合もあります。
* 血尿のときにはどのような疾患が考えられるか?
血尿は尿路腫瘍、尿路感染症、結石、外傷、膀胱炎といった泌尿器系疾患によっておこる場合と、各種の腎炎、ネフローゼ症候群、出血性素因その他の全身性疾患(内科的疾患)にともなって起こる場合があります。あくまでも原則論ですが、内科疾患で血尿をきたすのは主として各種糸球体腎炎であり、このときは通常蛋白尿を伴います。したがって尿中蛋白の有無が鑑別の一つの目安となります。
一方血尿をきたす泌尿器系疾患は表に示すように数多くの疾患があります。ともあれ、血尿のみられるときには重大な泌尿器科疾患が隠されていることが多いので、注意深い検査が必要となります。
無症候性肉眼的血尿 | 特発性腎出血 膀胱ガン 腎・尿管結石 膀胱炎 尿道出血 腎細胞ガン
遊走腎 前立腺肥大症 腎奇形 |
症候性肉眼的血尿 | 膀胱炎 尿管結石 腎結石 腎盂腎炎 膀胱ガン 前立腺肥大症 腎外傷
精巣上体炎 腎細胞ガン 尿道外傷 遊走腎 尿道カルンクル |
無症候性顕微鏡的血尿 | 特発性腎出血 遊走腎 腎尿管結石 腎炎 膀胱炎 腎嚢胞 水腎症
腎外傷 腎盂腎炎 尿道カルンクル |
症候性顕微鏡的血尿 | 尿管結石 膀胱炎 前立腺肥大症 精巣上体炎 腎結石 腎盂腎炎 前立腺炎 包茎 前立腺ガン 遊走腎 水腎症 腎結核 尿道カルンクル |