- お酒と肝臓の話
- 投稿者:梯医院 院長 梯 龍一
酒のみや大酒のみっていったいどれくらいのお酒を飲む人の事を言うのでしょう。
医学用語の中に「常習飲酒家」「大酒家」という言葉があり、定義は常習飲食家が日本酒1日3合以上、大酒家が1日5合以上飲まれる人の事を言います。ではお酒を飲むと必ず全員が同じように肝臓を悪くするかというと、決してそうではありません。アルコールを分解する酵素が多い人と少ない人で差があり、その酵素の量は遺伝的に決まっています。また女性は男性より一般的に酵素の量が少なく、男性の3分の2の量が目安になります。
一般的に肝臓に良いとされる飲酒量は1日にエタノールで約20gとされています。ビール類ではアルコール度数約5%ですから中瓶1本、日本酒はアルコール度数約15%ですから約1合になります。九州ではお酒といえば焼酎を飲まれる人が多いのですが、25%焼酎でしたら約100mlになります。みなさんは1.8L入りの焼酎を何日で飲まれますか?2週間以上もてばOKという事になります。明らかに多い量は1日80g以上であり、ビールだと大瓶2.5本、日本酒だと3合、焼酎だと1.8Lを5~6日で飲んでいる人になります。
大量飲酒者にはまず最初にほとんどの人に脂肪肝がみられます。その後も飲酒を続ければ、約20%にアルコール性肝炎が発症します。さらに長期に飲酒が続けばアルコール性肝硬変になります。アルコール性肝硬変になる目安は日本酒1日5合で20年です。治療は禁酒に優るものはなく、アルコール性脂肪肝の段階でしたら、禁酒のみで肝機能は正常化します。肝炎、肝硬変の人も進展度にそった治療法が必要ですが、すべては禁酒を行った上での事であります。
健康診断の血液検査では、GOT、GPT、γGTP等が肝機能検査として有名です。その中でγGTPがお酒の影響を強く受けると言われています。またお酒のせいで上昇していると思っている人の中に、ウイルス性肝炎の人がまぎれこんでるのもよくある事なので、肝機能が悪化している人はB型肝炎やC型肝炎の検査も受けましょう。
肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、肝臓病の多くはかなり進展しない限り症状がでないのが一般的です。症状が出ていない時に、健康診断で肝臓病を見つける必要があります。40才を超えたら毎年健康診断を受けましょう。そしてお酒は楽しく健康的に自分の分量をわきまえていただきましょう。
平成22年11月