- むねやけについて
- 投稿者:石橋外科医院 院長 石橋 雅彦
むねやけとは、上腹部から胸部にかけて上行する灼熱感で、患者さんを悩ませる厄介な症状です。では、むねやけはなぜ起こるのでしょう。
胃酸の本体は、強い塩酸ですが、胃の粘膜は粘液で保護されているので,胃酸に対して抵抗性があります。これに対して、本来胃酸にさらされない筈の食道は胃酸に弱く、胃酸が逆流すると不快なむねやけが生じます。
人間には、本来仰向けに寝ても胃酸が食道に逆流しないための機構が備わっています。食道が横隔膜を貫いて胃と接合する部分は、あるよくできた角度(ヒス角という)を持っていて、これが胃酸の逆流防止に重要な役割を持っていることがわかっています。また、胃には胃泡とよばれる空気のたまる部分があり、これがヒス角の形成にかかわっています。
食道が横隔膜をとおる部分の穴は、筋肉で取り囲まれていますが、この横隔膜の筋肉がゆるくなると、胃が胸の方に引き上げられた形になります。
そのためにヒス角が変形してしまい、胃酸が逆流してしまいます。これが、横隔膜裂孔ヘルニヤとよばれる状態で、むねやけの原因として最も多いものです。
症状は、前かがみになったり、仰向けに寝たりすると出現しやすく, 熱いものや、刺激物を取りすぎると悪化します。程度がひどくなると、吐血することもあります。治療は、制酸剤や、胃の運動を強めて胃酸をはやく十二指腸に流す薬等が有効ですが、重症の場合、ヒス角を再建する手術が必要なこともあります。
もうひとつ、胃の出口をふさぐ癌や、繰り返す十二指腸潰瘍のために、胃酸が胃にたまりすぎると、その圧のために胃酸の逆流が起こりむねやけの原因となる事もあるので注意が必要です。
むねやけで困っている方は、専門医にご相談されるのがよいと思います。