- バセドウ病
- 投稿者:井手胃腸科内科医院 院長 井手 一敏
動悸や体重減少で来院される患者さんのなかにバセドウ病のかたがおられます。バセドウ病についてお話します。
頻度について
発病年齢は、20歳代、30歳代が全体の過半数を占め、女性に多い病気で、その比率は男性1対女性4の割合と言われています。すなわち若い女性に多い病気で、20~30歳代の女性の約300人に1人と言われています。自験例でも若い人で女性が多いが、男性もありました。
原因について
バセドウ病は遺伝的素因になんらかの誘因が加わって、自分の体を攻撃する抗体(TSHレセプター抗体)ができて(自己免疫疾患)、それが甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの産生、分泌が過剰になることによって甲状腺の働きすぎの状態(甲状腺機能亢進症)が引き起こされる病気と言われています。甲状腺は首の前方にある臓器で、体の新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを主として海草に含まれているヨードを材料として合成しています。したがってバセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰に合成され体の新陳代謝が異常に活発になりいろいろな症状が出ます。
症状について
昔から次の三つの症状が有名です。
① 甲状腺腫…甲状腺腫とは甲状腺が腫れた状態です。バセドウ病の甲状腺腫は甲状腺の一部ではなく全体が腫れるのが特徴で首が太くなったように見えることがあります。
② 眼球突出…眼球突出は眼が出た状態です。
③ 動悸などの甲状腺機能亢進症の症状…甲状腺ホルモンの過剰によっておこる甲状腺機能亢進の症状には主なものに次のようなものがあります。
1) 動悸
動悸は胸がドキドキする症状です。じっと安静にしているときの脈拍は普通1分間に60から80程度ですがバセドウ病では脈拍が増えて1分間に100以上になることもあります。放っておくと心臓に負担がかかりすぎて不整脈(心房細動)や心不全を起こしたりすると言われています。
2) 手指振戦
手指振戦は手の指先がふるえる症状です。
3) 多汗
多汗はたくさん汗をかく症状です。バセドウ病では暑がりになり、たくさん汗をかくようになります。バセドウ病の患者さんにとって夏は辛い季節となります。
4) 体重減少
体重減少はやせてくる症状です。数ヶ月間に体重が7,8キロも減ってガンではないかと心配して受診される方があります。ガンと違ってバセドウ病の場合は食欲はあり、食べてもやせてきます。
5) 精神不安
精神不安はイライラする、集中力がない、落ち着きがないといった症状です。
上記のような症状がそろった典型例は診断は簡単ですが、そうでない場合は診断がつきにくく、体重減少で胃腸科、動悸で循環器科、手指振戦で脳神経科、精神不安で神経科、眼球突出で眼科へ回されたりすることもあると言われています。
自験例では眼球突出や甲状腺腫はなく、体重減少や動悸で受診されていました。
検査について
バセドウ病であるかどうかは血液検査でわかります。まず血液中の甲状腺ホルモンの量を測定して、過剰になっていないか調べます(遊離T3,遊離T4,TSH)。さらに甲状腺を刺激する特殊な抗体(TSHレセプター抗体)が血液中から検出されればバセドウ病と診断が確定します。このTSHレセプター抗体はバセドウ病の薬物療法で甲状腺機能が正常になって薬を中止できるかどうか判断する際の一つの目安になると言われています。
治療について
薬物療法、手術、放射線療法(アイソトープ治療)の三つがあります。それそれ治療に長所と短所があり、年齢、病気の程度、甲状腺腫の程度によってどの治療が適しているか決まります。
最後に
バセドウ病は多彩な症状を伴い症状の現れ方も個人差はあると思われます。自分もバセドウ病の症状に似た症状あると思われたら、かかりつけの先生のところで甲状腺についての血液検査を受けて見られたらよいと思われます。4,5日から7日で結果が出ます。