一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • くも膜下出血
  • 投稿者:ヨシタケ脳神経外科クリニック 院長 吉武 靖博

疫学
くも膜下出血は脳卒中の約10%を占め原因のほとんどは脳動脈瘤の破裂です。
従来の報告によれば年間発生率は10万人に対して平均15人と言われています。しかし久山町の22年間にわたる研究では10万人につき96人という報告もあります。
40-60歳をピークとして発症し高齢者ほど女性の比率が多くなります。危険因子は高血圧や喫煙があります。家族性発症は3倍以上と高くなっています。

症状
突然起こる激しい頭痛が特徴です。重症な方は意識障害を伴い昏睡や呼吸停止となり即死する場合もあります。軽微な出血では軽い頭痛のため歩いて受診することもあり、いつもと違った頭痛は感冒や片頭痛と安易に診断せず、くも膜下出血を念頭に置いておく必要があります。
また片麻痺などの神経症状に乏しいのですが一側の瞳孔散大や眼瞼下垂をきたした場合は破裂やその前兆の可能性があります。

治療
脳神経外科専門医がいる救急病院に緊急搬送します。
1.脳動脈瘤クリッピング:全身麻酔下に開頭し脳動脈瘤の根元をクリップします。
2.血管内治療:脳血管内にカテーテルを通してコイル塞栓を行う方法です。
治療法の選択は、重症度、年齢、合併症、手術の難易度などを総合的に判断して方針を決定します。

未破裂脳動脈瘤
成人の5%に存在しており脳ドックやCT,MRIの普及により未破裂脳動脈瘤の発見される頻度が増加しています。手術による治療合併症は死亡約1%、後遺症5%と無視できず破裂率を勘案したうえで治療を考慮します。
2003日本脳ドック学会のガイドラインでは:
#1 70歳以下、脳動脈瘤直径5mm以上、治療に支障を生じる合併症がないことが治療の適応です。
#2 脳動脈瘤直径10mm以上では積極的に治療が勧められます。
#3 70歳以上で直径3-4mm未満の脳動脈瘤の場合は個別に判断しますが積極的に治療を勧めない病院が多いようです。
2008脳ドックのガイドラインでは:
原則として患者の余命が10~15年以上ある場合に下記の病変について治療を検討することが推奨されます。
#1 大きさ5~7mm以上の未破裂脳動脈瘤
#2 上記未満であっても、

a.症候性の脳動脈瘤

b.後方循環、前交通動脈、内頸動脈―後交通動脈部の脳動脈瘤

c.ドーム/ネック 比が大きい・不整形・ブレブ(突出部分)を有するなどの形態的特徴を持つ脳動脈瘤
以上を参考にされることをお勧めします。
未破裂脳動脈瘤の治療方針決定にはインフォームド・コンセントが重要です。破裂率、自然歴、治療方法、治療成績を家族を含め十分考慮し方針を決定します。すぐに破裂する可能性は一般に低いことを説明し精神的不安を引き起こさないようにすることが大事だと思います。
治療を希望されない患者さんは6か月以内にMRI,MRAなどの画像により動脈瘤の大きさと形態変化の観察を行い増大傾向や突出部分(ブレブ)の形成が認められるか、症状が出現した場合は治療を勧めます。変化のない場合はその後1年ごとに経過観察を行い禁煙、大量の飲酒を避け、高血圧を治療し、生活習慣病の改善の指導をします。

平成22年6月

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