一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 漢方について
  • 投稿者:和漢堂福冨医院 院長 福冨 稔明

「病人」は「病」と「人」に分けられますが、西洋医学は主に「病」の方を診るのが得意であり、科学技術を利用して「病」の病態を精しく調べて診断をくだします。誤解を恐れずにいえば、診断がつけば治療はほぼマニュアル通りに決まります。しかし西洋医学では「病」を持っている個々の「人」の側面が無視されがちになります。

一方、漢方医学は「病」を持っている個々の「人」の側面を、すなわち「病」を持った人の体質・生活様式・生活環境などを重視しながら「病」をみてゆくわけです。しかし「病」のとらえかたが西洋医学にくらべて幼稚なところがあります。

 

漢方の診断方法
漢方では診断方法として、四診(四つの診察方法)が使われます。
四診とは望診・聞診・問診・切診のことをいいます。
(1) 望診とは、診察者の眼をもって患者の栄養状態・体格・皮膚の色やつや・むくみ・動作など全身的に観察します。舌の状態も診ます。
(2) 聞診とは、患者の音声・せき・呼吸などを診察者の耳で聞くことであり、臭いを嗅ぐことも聞診に入ります。
(3) 問診とは、患者及び家族から病状に対する情報を問い集めることです。
(4) 切診とは、患者に直接手で触れる診察法である。脈を診る方法(脈診)、腹部を診る方法(腹診)などがある。

この四つの診察法で情報を集めて、いわゆる「証」(患者の病態・体質などを診断)を診断して治療法を決めるのが漢方診断の基本とされてきました。

 

これからの漢方
病気の治療は西洋医学であれ漢方であれ、病態を正確に把握することが大切です。
古来の漢方では病の認識も病態の把握も幼稚でありました。それは望聞問切だけによる診察法にあります。例えば、腹診で腹の中に塊があるのを触れても、それが何かとなると、解剖もしたことがない漢方医学ではわからないのが当然であります。
これからの漢方医学は、病を明確に知るためには漢方的見方とともに西洋医学の手法も応用して、病人に関する情報をできるかぎり集めて漢方医学の弱点を補っていく必要があります。
しかし漢方医学には西洋医学にはない発想により、病を認識できる面があります。例えば、人間を気・血・水といったように大きくとらえる考え方があるます。また寒・熱、虚・実という病態の認識のしかたがあります。最も重要な悪血という病態の認識方法があることです。気の異常・血の異常・水の異常・寒証・熱証・虚証・実証・悪血という漢方独特の見方で病人を診れば、西洋医学とはちがった病気の治療法が見つかるものです。

 

西洋医学と漢方医学はどちらが優れているのかというのは意味のないことだと思います。病を診る眼が違っているのだから、見えるものが違い、したがって治療法も違ってくるし、効果も違ってくる。あたり前のことだと思います。
西洋医学でなかなか効果が出ない場合は、漢方的見方で病気をなおしてみるのも一つの方法でしょう。漢方治療は西洋医学の知識だけでは的確にできません。漢方に理解の深い医師に相談されるがよいでしょう。

和漢堂福冨医院 院長 福冨 稔明
鳥取大学医学部 卒業
北里東洋医学研究所・尼崎東洋医学研究所にて漢方研修
漢方の大家 山本 巌先生に漢方師事
福岡医師漢方研究会理事・福岡県東洋医会理事
第三医学研究会 所属

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