- 認知症の予防について
- 投稿者:本間病院 院長 本間 五郎
認知症とは「さまざまな原因によってもの忘れ(記憶障害)や判断力の障害などがおこり社会生活に支障をきたすこと」を言います。
認知症の原因は①脳梗塞や脳出血などの脳卒中(脳血管障害)で発症する血管性認知症 ②脳神経細胞が減少して脳が病的に萎縮して起こるアルツハイマー病 ③その他の認知症に大別されます。以前は血管性認知症によるものが多かったのですが、最近はアルツハイマー病が増えてきました。
以前このホームページで「認知症の症状」や「早期発見の大切な理由」など書きましたが、今回は「認知症の予防」について書いてみたいと思います。
<血管性認知症の予防>
脳卒中(脳血管障害)による認知症は、脳出血や脳梗塞で脳の血管が詰まったり破れたりすることが原因で起きます。障害された脳の部位によって「麻痺」や「言語障害」などさまざまな症状が現れます。認知症は記憶などに関係する部位が障害されることで起こる症状です。ただし、脳卒中を起こしたすべての人に血管性認知症が起こるわけではありません。血管性認知症を起こす経過としては多くの場合、麻痺や言語障害など脳卒中の症状が現れた後に、物忘れや今までにできたことができない、何事もやる気がない、などの認知症の症状が現れます。血管性認知症の原因は脳卒中ですから脳卒中の発作を繰り返すと、通常はそのたびに認知症の症状も階段を下りるように段階的に進行していきます。その進行を防ぐためには脳卒中の再発を予防することが重要です。
脳梗塞の場合、脳の血管を詰まらせる血のかたまり(血栓)ができるのを防ぐ抗血小板剤が再発予防に役立ちます。
そもそも脳卒中を起こした人の多くは、その下地となる高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病をもっており、これらの病気の治療や予防が血管性認知症の予防につながると考えられ、運動と食生活への気配りも大事になります。
<アルツハイマー病の予防>
最近、アルツハイマー病の発症に生活習慣が関係していることがわかってきました。そのため、生活習慣の改善が、予防につながるのではないかと考えられています。
まずは、食事の量や内容に気をつけます。さらに、運動などで体を動かし、頭を使うことも大切です。趣味を持ち、趣味のサークルに参加するなど、社会的活動をできるだけ続けましょう。
下記の表や図はアルツハイマー病の予防について記したものですが、血管性認知症の予防にも共通しているところもあり、参考にされて下さい。
脳を健やかに保つ10か条 (アルツハイマー協会、アメリカ)
1.頭を第一に | 健康は脳から始まります。脳は身体の中で最も大切な臓器のひとつです。脳を大切にしましょう。 |
2.脳の健康は心臓から | 心臓によいことは脳にも良いのです。心臓病、高血圧、糖尿病、および脳卒中の予防に役立つことを毎日続けましょう。これらの病気があるとアルツハイマー病になるリスク(危険度)が高くなります。 |
3.測定値を大切に | 体重、血圧、コレステロール、および血糖の測定値を望ましい範囲に保ちましょう。 |
4.脳によい栄養を | 脂肪が少なく、抗酸化物質を豊富に含む食品を摂りましょう。 |
5.身体をよく動かそう | 身体の運動によって、血流がよく保たれ、脳細胞の新生が促進される可能性があります。「1日に30分歩く」といったように出来ることからやってみましょう。身体と心の両方が活動的になります。 |
6.心に適度な刺激を | 脳をよく働かせることによって、脳の活力は増加し、脳細胞同士の連絡が強化されて脳の予備能が高まります。読み書きをする、ゲームを楽しむ、新しいことを学ぶ、クロスワードパズルを解くなどが推奨されます。 |
7.人とのつながりを | 身体的、心理的、ならびに社会的要素が組み合わさった余暇活動に参加することが、認知症の予防に最も役立つ方法かもしれません。人付き合いを大切にして会話を楽しみ、ボランティア活動、クラブ活動、学習会などに参加しましょう。 |
8.頭のけがに注意 | 頭の怪我は要注意です。自動車のシートベルトをする、転ばないように家の中を整理する、自転車に乗るときはヘルメットをかぶるなどあなたの頭を守ることが大切です。 |
9.習慣を見直そう | 不健康な習慣は改善しましょう。喫煙、過量の飲酒、および不正に取引される薬物の使用はやめましょう。 |
10.将来のために今日から | あなたの将来を守るために今日出来ることがあるはずです。 |
平成22年4月