- ヒバリ型人間とフクロー型人間
- 投稿者:和漢堂 福冨医院 院長 福冨 稔明
私は漢方的な眼で、人間を ヒバリ型とフクロー型人間に大別して二つにしている。
ヒバリ型人間
世の中には体の丈夫な人がいる。このような人達は、めったに病気に罹らない。しかし一度やると、乗るか反るかの大病である。
平素は元気で医者の門を潜らないから、医者にかかるのが大義である。胃腸も至って丈夫にできている。食欲も盛んで何を食べてもおいしく、少し位い食べ過ぎをしてもお腹をこわさない。子供なら肥満児となり、中年以降は糖尿病や動脈硬化症などの成人病となる。
骨格・筋肉などの運動系や、呼吸器・循環器系も丈夫で、体力があり、ねばりもよい。車に例えるとダンプカーである。
朝は早起きで、熱氣もよく、どのような場所でもよこになればすぐ眠られる。
体が丈夫で医者にかからない。健康診断もめんどうだから逃げて受診しない者もいる。生命保険の加入か何かの時に、高血圧や糖尿病などを指摘され、保険に加入出来ず危険状態だなどと脅される。あわてて医者にかかり、酒も煙草も皆止めて養生する。そのうちに酒も煙草ものみ出して、医者も次第に遠ざかり、忘れた頃に中風などになる。若い間は元気がよく誠に申し分がない。しかし中年以降はよくない。
フクロー型人間
ヒバリ型と反対に、弱虫の者も多い。年から年中、いろいろと身体の苦情が絶えない。体がしんどい、疲れ易い、体力がない、頭が痛む、肩がこる、胃が痞え重苦しい、嘔き気がる、胃が痛む、めまいがする、手足が冷える、朝は起きにくい、夜は眠られないなどなど。医者にいっても検査所見が得られないため、不定愁訴といわれ自律神経失調症、神経症、更年期障害、血の道症、あるいは肝臓の働きが少し悪いなどと言われて来院するものが多い。
体力がなく、粘りがきかないため、力仕事には向かない。労働など無理である。昔田舎では「のら」と称ばれ、「のら息子」たまに仕事すれば「のらの節句働き」などといわれて百姓も出来ない。従って都会に集る傾向がある。都会の生活には軽い労働や、夜型に適する面もある。
前者をヒバリ型とすれば、この方はフクロー型である。即ち「朝寝の宵っ張り」で朝はいつまでも床に居たい。日曜休日は昼近くまで寝ている者もいる。 たとえ早く起きたとしても、頭がボーットしてはっきりしない。体を動かすのが大義である。とにかく体も頭もエンジンがかからない。やっとのことで体を起こしてみると、近所のヒバリ型の奥さんが元気な声を立てて、掃除も終わり、洗濯物を干しているのをみて、一体あの人達はどうしてあんなに元気なのか、私はなんでこんなにしんどいのか、何処か悪いのであろうかと思う。
朝食は欲しくない。食べないと体に悪いからと考えて、無理に口へ入れることにはしているが、決して起きた直後はたべたくない。起きてから時間の経過とともに食欲が出てくるのである。
午前中は体の働きもよくないし、頭の働きも悪い。段々によくなり午後三時をすぎると非常によくなる。日が落ちるころから夜にかけては、一日中で最も元気である。何を食べてもおいしくて、またよく食べられる。色々の症状もこの時間滯には影をひそめ、全くないか、ほとんどなくなっている。だからスロースターターである。
このような症状が現れるのは、大体に二十歳前位いからである。最近は学童の時期からその症状を訴える者もあり、朝学校に遅れたり、午前中は保健室に居たりする。女の場合は結婚して、最初の子供を出産した頃からが最も多い。三十歳台は最もつらい時期で四十歳を過ぎると段々と訴えが少なくなり、六十歳を過ぎればほとんど元気である。七十~八十歳も元気で長生きする。交通事故や癌にでもならなければ嫌われる位長生きする。その点でもスロースターターである。
近年になって学童の時期からその症状を訴える者もあり。朝は起きられず、夜はおそくまで遊んで、なかなか眠らない。学校は遅れそうになるので親は何度も起こしに来る。ひどいのになると、目覚まし時計を自分で止めて、また眠り、「今日は目覚ましが鳴らなかった」という者もいる。朝めしは欲しくないし、また食べる時間もないため、そこそこにして学校に行き、夏は朝礼で脳貧血を起こしてブッ倒れる。午前中は授業中によく頭痛を訴えて保健室で休んでいるが、午後になって、給食を食べると、頭痛もよくなり、元気に運動場で遊んでいる。このような子供は学校に何人かいるものである。
ヒバリ型の子供が、早寝早起きで、両親が寝ている枕もとで遊ぶのと対照的である。
あなたはどちら型?
「禍福は糾える縄の如し、人間万事塞翁が馬」の例え、良いと悪いとは表裏である。
ヒバリ型の人は、中年を過ぎたころから高血圧症、糖尿病、高脂血症、動脈硬化症となり脳卒中、心筋梗塞への道を歩み、中年以降苦しむことになります。この苦しみから逃れるには、先ず生活習慣を変えていく努力が必要です。其の上で長年の生活習慣で体にたまったカスを取り除くような漢方薬の服用が次善の策でしょう。
フクロー型の人は、若い頃は体調不良で苦しいものですが、年とともに元気になってきます。フクロー型の体調不良には、非常によく効く漢方薬があります。服用始めて一週間もすれば、今迄の苦しみがウソのように思えるようになります。その上で身体を訓練するがいいでしょう。
フクロー型の人は、漢方医に相談されると「のら」だ「やる気がない」「怠け者」などと言われ続けた生活から開放されるでしょう。
平成22年2月