- 大腸がんの発見と治療
- 投稿者:RINDENクリニック 院長 林田 啓介
この10数年大腸がんは増加の傾向にあると言われてきました。国立がんセンターの統計から年齢調整死亡率を見ますと1990年代前半まで増加傾向でしたが以後減少に傾いてきています。減少に傾いてはいるものの、食事や生活習慣の欧米化から20年前と比べて大腸がんによる年間死亡数は19,000人から40,000人と約2倍に増加しています。
日本人の死亡数の中では肺がん、胃がんについで大腸がんは第3位です。性別では男性で肺がん、胃がん、肝臓がんの次で第4位、女性では第1位が大腸がんです。
大腸がんはほかの臓器のがんと比べて治る可能性が高いことが知られています。このため、死亡数を減らすには根治可能な比較的早期の時期に発見することが大切です。
大腸の検査には便潜血・注腸X線透視・大腸内視鏡検査が一般的です。最近ではバリウムやカメラを用いないCT検査による大腸造影法、PET検査・カプセル内視鏡など、より苦痛の少ない検査方法もでてきました。そして主要マーカー(CEA、CA19-9)と言われる血液検査もあります。
しかし、発見(診断)の確実性や見逃しの少ない点から見ますと大腸内視鏡検査を超えるものはまだないようです。また、内視鏡検査は同時に細胞の検査やポリープ切除の治療まで行える利点があります。
先ず、大腸がんのスクリーニングとして検診で使用される便潜血検査は簡便で費用も安く、どこの施設でも気軽にできることが利点であり、その評価は・・・便潜血陽性で検査を受けた方と、腹部症状(下腹痛・血便・便通異常)があって検査を受けた方のなかで見つかった大腸がんを比べますと、便潜血陽性で見つかった方のがんに早期がんが多かった・・・という報告があります。便潜血検査で症状のない大腸がんをみつけることが早期発見につながる方法と考えられます。
大腸がんの治療法も進歩しており、早期がんのなかで「リンパ節転移がない」と確実に予測できるものは内視鏡治療のみで根治可能です。そして切除できる腫瘍の大きさの適応範囲も拡大しています。進行がんの場合、開腹が必要でも腹腔鏡をつかった小切開で痛みの少ない手術ができるようになり、その施設も増えてきました。そして、肛門近くの直腸がんは人工肛門が必要とされていましたが、できるだけ肛門を温存(人工肛門を作らない)する手術法が選択されるようになってきております。
また、運悪くがんが再発して手術が不可能な場合、抗がん剤で治療しますがこの治療法も1年が精一杯であった延命効果が、2倍程度の期待が持てるようになってきており、なかには仕事しながら外来で治療することもできるようになってきました。
便潜血で陽性になるのは早期がんで50%、進行がんで80-90%といわれております。すべての大腸がんが発見できるわけではありませんが、大腸がんの進行は比較的緩やかなものが多いので毎年受けておれば治る段階で発見される確立が高くなることが期待できます。
平成21年12月