- 肺がん検診(住民検診)を受けましょう
- 投稿者:医療法人白石医院 院長 白石 恒明
肺がんとは?
日本人の死因の第1位はがんであり、その中で最も多いのが肺がんです。
平成18年の厚生労働省の統計によると、がんの部位別死亡率では、肺がんは男性では第1位、女性では第3位となっています。肺がんにかかる人は40歳代後半から増加し、年齢が高くなるほど多くなります。
肺がんの死亡数が多い原因としては、がんが進行した状態で発見されることが多く、また、他の臓器に転移しやすいため、治療成績が上がらないことが挙げられます。日本の喫煙率が欧米と比べ高いことや、今後一層高齢化が進むことを考えると、肺がんで亡くなる人はこれからますます増えていくと予想されます。
肺がんは、発生した部位によって、肺の入り口付近の太い気管支にできる「中心型(肺門型)」と、太い気管から離れた末梢の細い気管支、肺胞などの肺の端のほうにできる「末梢型(肺野型)」の二つに分けられます。「中心型」肺がんの発生には喫煙が大きく影響します。また比較的早い時期から咳、血痰などの症状が現れるのが特徴です。「末梢型」は非喫煙者にも多く見られ、かなり進行するまで自覚症状はほとんど出ないのが特徴です
肺がん検診の現状
小郡三井医師会が平成10年から平成19年に行った肺がん検診の結果では、受診者数は9万3718人、うち精密検査が必要と判定された人(要精検者)は974人(要精検率1.04%)。この検診を通してがんを発見された人の数は68人、その割合は0.07%でした。この結果から、がん罹患者数(1万人の検診受診者で癌が見つかった人の数)算出してみると、肺がん検診を1万人が受けると、104人が一次検診で「異常あり」と判定されます。そして、104人の中から7人に肺がんと発見されたという割合にになります。
肺がん検診の意義
2008年9月に国立がんセンターが科学的根拠に基づくがん検診ガイドラインが公表されました。これによると、非喫煙者には胸部エックス線検査です。喫煙者(原則として、50歳以上で1日に吸うタバコの本数x喫煙年数が400又は600以上の人、もしくは40歳以上で6ヵ月以内に血痰のあったハイリスクの人)には喀痰細胞診(痰を取って、含まれる肺の細胞を顕微鏡で調べる検査)を併せて行うことを推奨しています。
胸部エックス線検査は「末梢型」の肺がんを発見するのに優れています。「中心型」の肺がんは早期のうちから痰の中に剥がれたがん細胞が見られることが多いため、喀痰細胞診でがん細胞の有無を検査します。非喫煙者は「中心型」の肺がんになる危険が低いので、喀痰細胞診を受けるメリットはあまりありません。
検診間隔については、過去に国内で行われた調査研究の結果、2年前の検診は有効でないとの結果が得られていること等を考慮し、現時点では、年に1 度を推奨しています。時点での科学的根拠に基づく有効性の観点から、検診対象は40歳以上とするのが適当としました。
肺がんの予後(治療の経過具合)はあまりよくありませんが、治療技術が進歩し、早期のうちに発見して治療すれば約8割が治るようになりました。無症状のうちに検診を受診した人では、早期の肺がんが発見される可能性が高いことが知られています。早期がんのうちに発見して治療することが重要になります。
平成21年3月