- 坐骨神経痛と腰部椎間板ヘルニア
- 投稿者:さがら整形外科 院長 相良 正志
腰の骨から出た坐骨神経は、お尻を通って太ももの裏側を下り、ふくらはぎを通って足先に分布します。この神経の通り道で神経が圧迫を受けると足(下肢)が痛み、これを坐骨神経痛と言います。その原因として腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、梨状筋症候群、股関節疾患などさまざまな疾患がありますが、最も多いのが腰部椎間板ヘルニアです。
腰の骨と骨の間には、椎間板というクッションがあります。椎間板はアンパンのような構造をしており、外側のパンの部分を線維輪といい、その中に髄核というアンコが入っています。これらの後方には脊柱管という神経が通る管があります。パンの外側が破れ、中のアンコが飛び出してきて脊柱管内の神経を圧迫すると神経に炎症が起こり、痛みやしびれ、運動麻痺などの症状を引き起こします。これが椎間板ヘルニアです。
【診断方法】
理学的所見と画像診断とを合わせて診断します。画像診断としては、X線撮影、MRI検査、CT検査、特殊なものとして脊髄造影検査、椎間板造影検査などがあります。MRI検査は非侵襲的であり椎間板の状態や神経の圧迫の有無を確認することが出来ます。
【治療】
椎間板ヘルニアの治療は、出っ張ったヘルニアを引っ込めることではなく神経の炎症を抑えることが主体になります。まずは身体を動かさないように安静を保つことが大切です。コルセットなどで腰部を固定することも大事です。神経の炎症を抑えるための、消炎鎮痛剤や静脈注射の使用、腰の牽引療法も有効です。この様な治療でも効果がない場合、炎症を抑える神経ブロック療法が奏功します(以上を保存的治療という)。
近年MRIで椎間板ヘルニアを経時的に観察すると、ヘルニアが縮小または消失する場合があることが分かってきました。ですからほとんどの椎間板ヘルニアは数年の経過で治ってしまう事が多いようです。それでは手術が必要となるケースはどのような場合かと言いますと、①筋肉の麻痺が進行する場合、②尿失禁などの膀胱直腸障害が出現する場合、 ③保存的治療を3カ月以上行っても耐え難い痛みのため就労や学業に復帰出来ない場合などです。手術治療には、出っ張ったヘルニアを取り除くだけの方法とこれに脊椎固定術を併用する場合があります。一部の症例には内視鏡を使った低侵襲の手術も可能となっています。また一部の医療機関において経皮的レーザー椎間板減圧術(俗に言うレーザー治療)が自費診療(厚生労働省が保険診療を認めていない)で行われていますが、治療成績が安定せず(一部効果のある症例もある)、また合併症の報告も多く、推奨される治療法には至っていません。
【治療担当者からの意見】
整体、カイロプラクティックなどの民間療法で症状が悪化して来院される患者さんが多くおられます。下肢の痛みやしびれを伴う腰臀部痛の場合は整形外科専門医に相談しましょう。
平成20年12月