- 発達障害について
- 投稿者:こぐま学園 曳野晃子
最近マスコミで「発達障害」という言葉を目にしたり耳にする機会がふえています。「発達障害」という言葉には様々な疾患が含まれています。
運動発達障害:これは頸のすわり、寝返り、お座り、這い這い、つかまり立ち、歩行という一連の体の動きの発達が遅れてくるものです。家族も症状に気づきやすく、乳幼児健診などで指摘されることもあり、早めの対応が可能です。
広汎性発達障害:広汎性発達障害とは自閉的な特徴を有し、社会性、コミュニケーション、認知などの領域に生まれつきの障害を認める疾患の総称です。障害原因が脳全体のシステムにあると考えられ、このような名前がついています。診断基準はDSM-Ⅳ、ICD-10で定義されています。
疾患としては、自閉性障害、レット障害、小児崩壊性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害の5つがはいります。基本となる3つの特徴は、①対人関係や社会性の障害がある②コミュニケーション能力に障害がある③こだわりがみられることです。具体的には、ものごとの全体を見て理解することが困難で、耳にしたり目にしたりしたことの一部に反応してしまいがちです。そのために特定のことにこだわったり、怒りを爆発させてしまいます。一方で全体の意味はわからなくとも、その場の雰囲気を感じとったり反応したりすることはできます。
自閉症とというと物事を正しく理解しているのだが、用心深くて自分の心を閉ざしてしまうというイメージで、大雑把に表現すると「outputの障害」の印象があるかもしれません。しかし実際は逆で知覚や認知という入ってくる情報の処理に故障があるinputの障害です。そこで対応としてはどのようにしたらその子供さん達に正しい情報が入るのか検討し、工夫することが必要だといわれています。症状は幼児期に最も目立ち、学童期に入るとやや改善してきます。しかし思春期に入ると何よりも困る「パニック」といわれる問題行動が顕著になります。それを少しでも軽減するために幼児期から対策を立ててことが求められます。
軽度発達障害:この名称は発達に障害のあるものの中で比較的軽度と考えられた疾患の総称でつけられました。「軽度」ということは障害に気づきにくい、障害がわかるまでに時間がかかる、障害の発見が遅れるといえます。障害として受け止められず、本人のわがままや、親のしつけの問題と捉えられてしまうことも多々あります。そのため子供が非難されて傷ついたり、養育者も追い詰められ虐待的な対応に至ったりすることがあります。実際には障害そのものが「軽い」ことを意味してはいません。むしろこの子供さん達が抱えている問題は重く、深いものがあります。そこで「軽度」という言葉をはずす流れになっています。
一般に発達障害は乳幼児健診でチェックされます。1歳6か月健診では言葉が出始めたか、3歳健診では会話が十分成立し抽象概念が育っているかがポイントになります。
しかし軽度発達障害のお子さん達はここまでで障害に気づかれることがほとんどありません。3歳健診以降に普通ではない落ち着きのなさ、学習能力のかたより、などで気づかれます。この発達障害に含まれる疾患は注意欠陥・多動性障害、学習障害、高機能自閉症などです。これらのお子さん達は様々な問題を抱えていく中で自分に自信がなくなったり、逆に反抗的になったりすることが多くなります。そもためにせっかく自分が持っている能力を十分発揮できないまま成人し、就職や結婚などで困難な場面に遭遇しがちになります。
周囲の人の本人理解や一人一人に合わせた環境調整などが必要なお子さん達です。
平成20年10月