一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 花粉症って?
  • 投稿者:萩尾耳鼻咽喉科医院 萩尾 良文

現在、日本人の約20%が花粉症だといわれています。では、花粉症とはいったいどんな病気なのでしょうか。
事の起こりは19世紀初めのイギリスで、干し草を束ねていた農夫が、ある日突然、発作的なくしゃみに襲われました。原因は、イネ科の牧草の花粉―。その奇妙な病は1世紀余を経て日本にももたらされ、1964年当時盛んに植林されていたスギの花粉による初の症例が報告されました。以来、生活水準の向上とともに今や日本人の国民病となったこの病気の予防法と治療法、そして“つきあい方”(スギ花粉症を中心に)まとめてみました

花粉症の症状が現れるしくみ
人間のからだには、体内に侵入しようとした外敵を取り除こうとする働きが備わっています。たとえば、鼻水で洗い流そうとしたり、クシャミで外に吹き飛ばそうとしたり。ただ、人によっては、ある特定の異物(アレルゲン)の浸入により、この働きが行きすぎて過剰反応(アレルギー反応)を起こしてしまいます。花粉症は、からだに侵入した花粉を、敵と認めて反応してしまう過敏な体質の人に起こるのです。

花粉症の原因(アレルゲン)
スギやヒノキなどの植物の花粉が原因となって、くしゃみ・鼻みずなどのアレルギー症状を起こす病気です。季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれています。その仲間として通年性アレルギー性鼻炎(アレルゲンが一年中あり、症状も一年中継続します。)があります。通年性アレルギー性鼻炎の主なアレルゲンとして、ダニ・家の中のちり(ハウスダスト等)・ゴキブリなどの昆虫、ペットの毛・フケなどがあり、喘息、アトピー性皮膚炎などを合併することがあります。
ところで、花粉症の原因となる植物は、日本では、約60種類と報告されています。
主なアレルゲン:スギ、ヒノキ、カモガヤ、オオアワガエリ、ブタクサ、シラカバなどです。

症状は、クシャミ、鼻水、鼻つまり、目のかゆみ、鼻のかゆみ、咽喉かゆみなどが出現します。
診断:鼻鏡検査、鼻内視鏡検査、副鼻腔単純レントゲン検査、鼻汁好酸球検査などのアレルギー性の診断また原因抗原の検査等がありますが、最も重要なのが問診です。かかりつけ医に相談して、花粉症日記をつけると個々人のベストの治療を発見するのにより効果的です。

治療方法:治療の第一の目的は、花粉飛散期の日常生活の向上です。大きく分けると4つに分類できます。

治療1
・抗原の除去と回避。
・花粉情報に注意する。
・花粉の飛散が多い時は、外出を控え窓・戸を閉めておく。
・花粉の飛散が多い時の外出時は、マスク、メガネ、帽子を着用する。
・外出後、帰宅するとき衣服や髪の毛をよく払い入室する。洗顔、うがい、鼻をかむ、出来れば、シャワーを浴びる。
・部屋掃除をまめに行う。

治療2(お薬を内服、点眼、点鼻する)

使い方
目的
良い点
注意点
服用するときのポイント
抗アレルギー薬
主に内服薬の他、点鼻薬、点眼薬
症状全般に(個々の薬に特徴有り)
比較的副作用が少なく安全性が高い
効果が現れるまで約1~2週間かかる
花粉が飛び始める2W前から、期間中は服用
抗ヒスタミン薬
鼻炎薬(内服薬)や点鼻薬、点眼薬など
鼻水、かゆみなどを止める
症状をおさえるのに速効性がある
眠気がある。 運転、仕事、勉強への影響(+)
生活に支障が出たときに「お助け係」として使用
ステロイド剤
点鼻薬、点眼薬(内服や注射もある)
鼻づまりなど、炎症をおさえる
ひどい症状のときに劇的に効く
長期間使うと副作用が出やすい
医師の指導を受け必要なときに

治療3(手術)

行い方
目的
良い点
注意点
ポイント
レーザー手術
鼻の粘膜をやんわりと焼く
鼻水、鼻づまり
日帰りでき、時間も1回5~20分間で、出血や痛みもない。70~80%の効果
手術後約1週間、一時的にかえって鼻づまりが強く起きる
飛散前。飛散が始まり、発症してからでは、効果が薄い

治療4(唯一の根本的治療)

行い方
目的
良い点
注意点
ポイント
減感作療法
(免疫療法)
スギ花粉エキスを、長い期間、皮下注射し身体を徐々に体質改善
スギ花粉に過剰反応しない体質に
治療が終われば薬なしも望める。75%の効果
行える専門医が限られている
飛散後からスタートし、始め半年間は週1~2回、更に5年以上月1回の注射と、かなりの根気がいる

花粉症とかぜの見分け方は?
かぜは通常、1週間程度で治りますが、花粉症は、原因となる花粉が飛んでいる間、ずっと続きます。また、かぜの場合は、数日でねっとりした鼻汁になりますが、花粉症は、さらさらした「水ぱな」のままです。そのほか、目のかゆみがあれば花粉症、実際に熱が出ていればかぜの疑いが強い、という見分け方もできます。花粉症かなと思ったら、専門医に診断してもらいましょう。

最後に、2005年に鼻アレルギー診療ガイドラインが発行されておりEBMに準じた治療が可能となりました。また、近年スギ花粉症の低年齢化の現状もあり、4,5歳のお子様も発症します。逆に、高齢者でも花粉症の可能性があり、現在毎日飲んであるお薬との飲み合わせについても、専門医に相談されることをお勧めします。

平成20年3月

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