- 脳血栓と脳梗塞
- 投稿者:石田医院 院長 石田 清和
三大疾病のひとつ、脳卒中については、患者さんよりよくご質問を頂きます。
先日も「最初は脳血栓と診断されていたのに、退院前には脳梗塞と診断された。入院中に違う病気が起こったのだろうか?」と心配されて来院されたご家族がおられました。
特に冬の間は血圧が上がりやすくなり、脳卒中になる患者さんが増えてしまいます。
ただ、脳卒中はいくつかの病気の総称であり、患者さんやご家族にとっては分かりにくいようです。昔から、急に手足が麻痺したり、言葉が不自由になったりといった病気が知られており、卒中や中風と呼ばれていました。医学が進歩する中で、その原因が脳の病気であることが分かり、脳卒中と呼ばれるようになりました。
脳卒中は、血管が破れて起こる出血性脳血管障害と、血管が詰まって起こる虚血性脳血管障害に分けられます。それぞれの代表的な病気は以下の通りです。
◇出血性脳血管障害 : 脳出血(脳内出血)、くも膜下出血
◇虚血性脳血管障害 : 一過性脳虚血発作、脳梗塞(脳血栓、脳塞栓)
ここでは、患者さんよりご質問頂くことが多い脳血栓と脳梗塞について、述べさせていただきます。
まず、脳血栓も脳梗塞も脳の血管が詰まって起こる病気です。実は脳血栓は脳梗塞の中に含まれます。つまり脳梗塞の一病型が脳血栓です。ここで誤解が生じやすいようです。
脳梗塞には脳血栓(アテローム血栓性梗塞)、脳塞栓、ラクナ梗塞の三つの種類(病型)があります。現在ではこれらに加えて特殊な原因(病気)による脳梗塞もわかっています。
◆脳血栓(アテローム血栓性梗塞)
脳の動脈血管に動脈硬化が起きて、その結果徐々に血管が細くなり、ついには詰まってしまい、その結果として起こる脳梗塞です。これがいわゆる脳血栓です。徐々に病気が進むため、数日間かけて症状が悪化することもあります。動脈硬化を悪化させるような病気や症状(高血圧、喫煙、高脂血症、糖尿病など)があることが多く、それらを治療することで脳血栓を予防することができます。
◆脳塞栓
心臓や首の動脈血管でできた血栓(血の塊)が脳の動脈血管に流れ着いて詰まってしまい、その結果として起こる脳梗塞です。大きな脳の動脈血管を詰めてしまうことも多く、突然症状が起こるため重症化しやすい脳梗塞です。心臓の病気(心房細動などの不整脈、心臓弁膜症、心筋梗塞など)がある方は、特に注意が必要です。予防としては、もともとの病気の治療のほかに、血栓(血の塊)ができにくくする薬を使うこともあります。
◆ラクナ梗塞
いわゆる小さな脳梗塞です。実は脳出血と同じメカニズム(機序)で起こると言われています。血圧が高いと脳の動脈血管の壁がもろくなり、血管を形成する細胞の一部が壊死してしまいます。その結果、血管が破れれば脳出血、血管が詰まってしまえばラクナ梗塞になると言われています。したがって、脳出血と同様に血圧や喫煙に注意が必要です。
一般の患者さんは脳血栓と脳梗塞とが違う病気と考える方が多いようですが、今までお示ししたように、脳梗塞の一病型が脳血栓(アテローム血栓性梗塞)です。
脳梗塞にはいろいろな原因と病型があります。それぞれに対して治療法も違えば予防法も違います。しかし、どんな脳梗塞も、起こってしまったとき如何にして早く適切な治療を受けるかが非常に重要です。もし脳梗塞に注意が必要な症状や病気があれば、まずお近くのかかりつけの先生にご相談されることをお勧めします。
平成17年3月