- ジョギングのすすめ(メタボリックシンドローム予防~幸せな老後を目指して)
- 投稿者:聖和記念病院 内科 古野 浩秋
日本は世界に誇る長寿国ですが、長生きすることが幸せとは限りません。
では幸せな老後とは何でしょうか?人それぞれ意見は分かれるでしょうが、私は「年をとっても自分自身の足で何処にでも行くことが出来ること」だと思います。
交通網の発達・車の増加などで人は歩かなくなり運動不足になりました。さらに食の欧米化で肥満者が増え、近年メタボリックシンドロームが問題になってきました。
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは、日常の生活習慣が多くの危険因子を呼び覚まし、それらが互いに重なり合うことにより、心筋梗塞や脳卒中に至らしめる症候群とされています。内臓脂肪の蓄積が背景にあり、高血糖・高血圧・高脂血症を誘導すると考えられています。
このメタボリックシンドロームの予防および運動療法として有酸素運動が適しており、ウォーキング・ジョギング・水中歩行・水泳・サイクリングなどはその代表的なものです。
最近ウォーキングやジョギングをされる方は増えましたが、中年男性をあまり見かけません。仕事が忙しく時間がとれないからだ思いますが、実はこの年齢からメタボリックシンドロームおよび予備軍が増えていきます。
まだ体力があるから無理がききますが、食生活の乱れ・運動不足から肥満になり高血圧症・糖尿病などが少しずつ悪化していきます。症状が無いからと言って放置していると将来的に脳卒中・心筋梗塞・腎不全など恐ろしい病気になるリスクが高まります。
肥満やメタボリックシンドロームとは無縁の方でも、運動不足から足腰が弱り老化とともに歩けなくなるかもしれません。やはり運動が必要ではないでしょうか。
ジョギングは骨粗鬆症の予防にもなるので女性にも是非お勧めします。
ところで運動(ジョギング)を始めるに当たって、事前にメディカルチェックを受けることが必要です。
走ってよいと診断されてもいきなり全力疾走するわけではありません。まずは天気のいい日に好きな場所を選んで腕を大きく振ってゆっくり歩いてみましょう。
次に少し速足にしてしばらく歩き、気分が乗ってきたらゆっくりゆっくり走ってみましょう。速歩きの人と同じくらい、いやもっと「ありえない」と思えるくらい遅くても構いません。体が慣れるまではこれ以上スピードを上げる必要はありません。
日本人は 「走る」=「きつい」 という固定観念を持っていますが、まずこれを捨てて走ってみましょう。
きつければ「100m走って100m歩く」を繰り返してもいいでしょう。
張り切りすぎはいけません。無理をせず次回へつなげることが大切です。
慣れてきたら自分の体と相談しながら少しずつ走る時間を伸ばしていきます。距離にこだわる必要はありません。自分のペースで「楽しく走ること」が一番です。
週に2~3回続けていくと、そのうちに体重・体型・持久力など変化が出始めると思います。
運動すると体脂肪量が減少し筋肉量が増えるので、基礎代謝が上がり太りにくい体になります。但し運動したからといって、今まで以上に食べたりアルコールを飲んだりするのは厳禁です。
小郡市には運動公園があり、1周1キロの周回コースがあります。ここではウォーキング・ジョギングしている人をよく見かけますから、場所選びにお困りならいかがでしょう。
さらに立派な陸上競技場もあり2時間100円でシャワーまで利用出来ます。トラックはラバーなので足腰に負担が少なく、ウォーキング・ジョギングに使用しても構わないので(決して速く走る必要はありません)利用経験のない方は新鮮で楽しいかもしれません。
自分が走っている道の距離が知りたい方はジョグマップhttp://www.jognote.com/jogmap/を利用してみて下さい。
ジョギングとは、ズバリ、マイペースで走り続けること。
特に道具もいらないから気軽に、いつでもどこでも、ひとりでもできます。
みなさん、幸せな老後を目指してゆっくり走り出してみませんか。
注意点
肥満が強く関節・筋肉に負担がかかりすぎる人は、必ずウォーキングから始めて下さい。
ケガ予防のために運動前後のストレッチ(弾みをつけずに筋肉をゆっくり伸ばす)を行いましょう。
汗をかくために運動するのではありませんから、季節に適した服装を心がけましょう。
ジョギングして体のどこかに違和感や痛みが出たらウォーキングに戻り、痛みが続くようならその日はやめにしましょう。痛みの出た所を水や氷でよく冷やして、翌日以降も痛みが続くなら整形外科を受診してください。
水分補給について
水分補給は大切ですが、スポーツドリンクで補うことはお勧めしません。カロリーオフと書いていても実際には多くのスポーツドリンクには栄養分が入っているし、塩分も入っています。せっかく運動して日頃取りすぎた塩分を汗で体外に出しエネルギーを消費したのに無駄になるからです。長時間・長距離を走ったり、炎天下で運動しなければ水や麦茶の方がいいでしょう。
水分補給は喉が渇いたと感じる前から少しずつ何回にも分けて行うことが大切です。
汗をかいて体重が減ったことを「やせた」と表現する人がいますがこれは間違いです。運動前後の体重差は汗をかいて脱水になっていることの証明ですから運動後も減った体重分の水分補給が必要です。
運動後のビールは美味しいですが、ビールには利尿作用があるのでこの場合の水分補給にはカウント出来ません。
平成19年12月