一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 在宅医療について
  • 投稿者:やなぎ医院 院長 柳 純二

 皆様は、「在宅医療」という言葉をご存知でしょうか?在宅医療というのは、悪性腫瘍の末期状態の方、脳卒中後遺症や重度の肺気腫や変形性関節症の方、神経難病の方などでいわゆる寝たきり状態の患者様に対して、医師や看護師が患家に定期的に訪問して行う医療のことです。よく似た医療に「往診」があります。往診とは、急に病状が悪化して一時的に通院が困難な場合に、緊急に患家に訪問して行う医療のことです。往診と在宅医療の大きく異なる点は、往診の場合は症状が改善すれば通院治療にもどることが基本となり、在宅医療は常に患家で医療を行うという点です。

 当然ながら在宅で行える医療行為には限界があります。通院時には可能なエックス線検査、エコー検査、内視鏡検査などは、在宅では簡単には行えません(将来は可能になるかもしれませんが)。しかし血液検査、尿検査、心電図検査、酸素飽和濃度検査、点滴、注射、処置、指導などは可能です。また最近は各種の在宅医療用の機器や薬剤が発達してきたために、在宅でもさらにいろいろなことが可能になっています。例えば、経管栄養管理、中心静脈栄養管理、在宅酸素療法、麻薬による癌性疼痛の管理なども比較的楽に出来るようになりました。従来は入院しないと出来なかったような医療行為が、在宅でもかなり可能となっています。医療機器や薬剤だけではなく、人的な整備も随分進んできました。介護保険の充実により、24時間対応の訪問看護師さんやヘルパーさんとの連携も取り易くなっています。特に小郡三井医師会内では、医療機関同士の連携が大変うまく出来ていますので、必要であれば随時の往診や緊急入院、検査入院なども問題なくスムーズに行えます。

「自分の生涯を自宅で終えたい」というのは、誰しもが願うことではないでしょうか。しかしその実現には、家族の方を中心とした多大な身体的、精神的な負担を強いるということも現実です。ただ以前ほどは家族の方の負担をかけずに、在宅医療が出来るようになってきたということも事実です。人生の終焉を自宅で迎えることが決して不可能なことでは無い、という事です。もちろん病状によっては入院治療を余儀なくされることもあると思います。しかし在宅医療という選択肢もあるということを皆様にご理解頂ければ幸いです。

平成19年7月

 

PAGE TOP