- 胆石症について
- 投稿者:嶋田病院 西村 一宣
みなさんは胆石という病気をご存じでしょうか。聞いたことのある方や実際にご自分が治療を受けた方もあると思います。胆石は胆管や胆嚢にできた結石の事をいいます。胆管は肝臓の中に木の枝の様にのびています。肝臓で作られた消化液である胆汁が胆管を流れてきて集まり、肝臓の外にでて1本(総胆管)になります。最後は十二指腸に口を開き、胃から流れてきた食べ物と混ざります。胆嚢は総胆管の途中についている袋で、胆汁の貯蓄・濃縮、排出を担当しています。胆石ができる原因は胆汁成分の変化、胆汁のうっ滞・細菌感染などが考えられていて、成分によって泥状だったり硬かったり、色や形、大きさもバラエティーに富んでいます。
最近、人間ドックや検診などで腹部超音波検査が普及し、無症状の胆石もしばしば見つかります。胆石が存在しそれに伴う症状が認められるときに、胆石症と呼びます。胆石症の症状は、胃もたれ感や不快感の様なものもありますが、激しい腹痛(疝痛発作)や発熱、黄疸といった症状も稀ではありません。胆石がひきおこす病態として、急性胆嚢炎・胆管炎・急性膵炎・胆嚢癌などが挙げられます。
治療法は病態に応じて様々なものがあり、さらにいろんな組み合わせがあります。代表的なものには胆嚢温存療法(溶解療法・体外衝撃波破砕療法)や腹腔鏡下胆嚢摘出術、内視鏡的治療などがあります。各治療法には適応があり、個々の症例で治療方針が異なりますので、詳しくは各医療機関で聞かれてください。
★胆嚢温存療法
胆石溶解療法はのみ薬で結石を溶かす治療法で、溶解しやすい条件の石に対して時間をかけて治療します。溶けなくても薬を内服することで、痛み発作の出現や急性胆嚢炎で手術する確率が減ることが分かっています。体外衝撃波破砕療法も治療適応の条件があり、すべて例で完全消失するわけではありません。またこれらの治療法は胆嚢が残りますので結石の再発があります。
★経皮経肝的胆嚢穿刺吸引術またはドレナージ術
針を皮膚・肝臓を貫いて胆嚢に刺して、胆嚢内の胆汁を抜いてあげる手技です。急性胆嚢炎で結石嵌頓がある時など有効です。もちろん根本的な治療ではありませんので、他の治療の追加が必要となります。
★腹腔鏡下胆嚢摘出術
現在では胆嚢結石症の標準治療となっています。お臍と他に3箇所(2箇所でしている施設もあります)の1~2cmぐらいの傷で結石を胆嚢の袋ごと摘出します。術後の痛みは従来の開腹胆嚢摘出術と比べて非常に軽く、手術後5~7日で退院できます。腹腔鏡下手術で総胆管結石の治療を同時にすることもあります。胆嚢炎が激しかったり上腹部の手術をすでに受けておられる方は、腹腔鏡の操作が難しく開腹胆嚢摘出術を選択する事があります。
★内視鏡的治療
胃カメラを胆汁の出口である十二指腸に進めて、胆管内の石を取り除いたりします。胆嚢結石と総胆管結石の合併例では、総胆管結石をこの方法で除去した後に腹腔鏡で胆嚢を摘出したりもします。
自分で胃が悪いとばっかり思っていた方で偶然胆石が見つかり、胆嚢をとったところ症状が消失したこともあります。気になられた方はまずは近くのかかりつけの先生にご相談されてください。
平成17年9月