- 年をとってからの骨折には要注意!
- 投稿者:丸山病院 柴野 惠介
昨今の健康ブームの中、生活習慣病など病気についての情報は多く、気を使っておられる方も多いでしょうが、「骨折」と聞いても、怪我をした時に運悪く起きてしまうものと思うぐらいで、あまり気に留めていないのではないでしょうか?
そこで今回は「高齢になってから骨を折ると、その後が大変ですから注意しましょう!」ということでお話ししてみたいと思います。
骨折は年齢にかかわらず起きますが、若い時と較べて年をとると何が違うかというと、骨が「折れやすく」、「治りにくい」という点にあります。
なぜ「折れやすい」かというと、1) 骨粗鬆症などにより骨が弱くなっていることに加え、2) 筋力、柔軟性、バランス感覚などの体力の低下により転倒しやすくなっているからです。骨が非常に弱い方などは転ばなくても背骨が徐々につぶれて、背中が曲がってきます。
次になぜ「治りにくい」かというと、骨が弱い上に折れた骨を修復する力も弱くなっているために骨がつながるまでの時間がかかったり、元々の体力の衰えがあるために、リハビリに非常に時間を要します。そうなると思うように動けないため、足腰の力が弱くなったり、手足の関節が硬く動きにくくなったりするばかりではなく、内臓の働きも悪くなり、病気にかかりやすくなったりします。怪我が大きければ大きいほど「動けない⇒体が弱くなる⇒動けない」という悪循環が生じ、リハビリが若い方のようには進まない場合も多いのが実情です。
そうなると骨折自体の治療が終わっても、元のように体を自由に動かすことができないため、今までできていたことができなります。特にスポーツや仕事で日頃から体をよく動かしていた人ほどそのギャップが大きく、辛さも大きなものとなります。重い後遺症が残ると、トイレに行く、食事を摂る、風呂に入るという日常的なことすら他人の手を借りなければならなくなってしまうのです。
また、現在では高齢の方でも、早くリハビリが始められるように骨折の場所によっては積極的に手術を行いますが、なかには手術が必要な場合でも体の状態が悪いために手術ができず、寝たきりあるいはそのまま亡くなってしまう方もおられます。
ではそうならないために、どうすればよいのでしょうか?
まずは「転ばないよう、また骨に無理な力がかからないよう上手に転べるように日頃から体をよく動かし、筋肉の力を強くし、体を柔らかくしておくこと。」そして「骨を強くしておくこと。」などが考えられます。このことは不幸にも骨折した場合でも、その後のリハビリを早くすすめるのに役立ちます。
骨を急に強くすることはできませんが、年齢とともに骨は年々弱くなるため、まず、これ以上骨が弱くならないようにするということを目標にします。
筋肉をつけたり、体をやわらかくするということも急にできませんが、努力すれば確実に結果はついてきます。
しかし、骨や筋肉だけが強くてもいいわけではありません。骨折しないためにも、骨折しても早く元の体に戻るためにも、骨や筋肉も含めた体全体の健康づくりをしなければなりません。そのためにはまず、自分の体の状態、そして生活内容を細かく見直し、足りないところを補い、良くないことをやめなければなりません。
食事に関して言えば、好き嫌いせず、できるだけ多くの種類の食品、添加物の入っていない自然のもの、季節の地の物を適量、三食きちんと、ゆっくり時間をかけて食べます。骨や筋肉を含めて体づくりをするには原料の供給が必要ですが、食品添加物の中には摂り過ぎにより骨からカルシウムが溶け出してしまうなど体に良くないものも多くあります。
そして、自分でできることは自分でする。便利なものばかりに頼らないで、面倒くさがらずにできるだけ体を動かし、夜は十分に睡眠をとり疲れを癒す。ストレス溜めず、自然のリズムに従って暮らしていく。
できることをあせらず自分のペースで、毎日少しずつでも続けていくことで自分自身が肉体的、精神的に健康な状態に傾き、そうなると「よく食べ、よく動き、よく眠る」ことができるようになり、さらに健康な体になっていくという良い循環につながります。
かかりつけ医をお持ちの方は、自分の体の状態や生活内容のチェック、そして改善方法などをその先生に相談されたらよいと思いますし、そうでない方は人間ドックや*アンチエイジング外来などを利用するのも一つの方法だと考えます。
「寝たきり」の原因の2番目は骨折です。
沖縄には“ピンピンパタイ”という言葉があり、「人生最後まで元気でピンシャン生きて、退き際はコロリと爽やかに」という意味だそうです。
自分のために、家族のために、理想の”ピンピンパタイ”を目指しましょう!
*当院で行っているアンチエイジング外来では、骨の強さをはじめ、骨をつくる力、手足の筋肉の量やバランス、筋肉をつけるために必要なホルモンの量、体内の有害物質などを量ることにより、体の状態のチェックを行っております。
平成18年12月