- 日本人に多い胃がん・大腸がん
- 投稿者:嶋田病院 院長 島田 昇二郎
●胃がん・大腸がんの特徴
日本人に一番多いがんは「胃がん」ですが、最近では胃がんの死亡率・罹患率(病気にかかる率)ともに減少傾向にあるといわれています。胃がん検診の普及や治療技術の進歩で命が助かる患者が増えているのです。罹患率の低下は、食品の保存方法が、冷蔵庫の普及で塩蔵から冷蔵、冷凍へと変わったこと、戦後の食生活の変化などが考えられています。
「大腸がん」は肺がん、胆道がん、膵がんなどとともに日本人では増加傾向にあり、特に大腸がんは急激に増えており、このままいくと、大腸がんの罹患率は年間8万人以上になると予測され、胃がんを追い越すのではないかと恐れられています。この原因としては、食生活の欧米化(高脂肪、高蛋白、低繊維の食事)が考えられています。
●初期症状がはっきりしない
一般に風邪などの場合は、発熱、痛みなどの症状が出るため、早い時期に診断できますが、がんの場合、早期ではもちろん、かなり進行してもはっきりした症状が現われないことが多く、症状が出たときにはすでに手遅れ、ということもよくあります。だからこそ、がんの定期診断が重要になってきます。
●がんの進行度-早期がんと進行がん
胃も大腸も壁は四層からなっています。がんは必ず一番上の粘膜層から発生します。そして、大きくなるに従って下の層へと進んでいきます。早期がんとは、がんが粘膜層やその下の粘膜下層にあって筋層に達していないものをいい、この段階なら他の臓器に転移していることは少ないといわれており、手術で胃や大腸を切除すると治る可能性が高いのです。早期がんの中でも粘膜層にとどまっているものは、ほぼ100%がんの転移はないといわれています。がんが粘膜にとどまっている段階で発見されればお腹を切らずに内視鏡で切除するだけで治る場合があるのです。
進行がんはがんが筋層にまで侵入していて、他の臓器に転移している可能性が高いため、手術で胃や大腸をとっただけでは治らず、再発することがあるのです。
これらのことから、がんの早期発見と早期治療がいかに大切であるかがよくわかります。
●がん検診の大切さ
がん検診は、無症状のうちに検査を行い、がんを早期に発見して治療し、がん死への進行をとめることが目的です。
胃がん検診の多くは、バリウムによるⅩ線検査です。検診の結果、約10%の人が要精検とされ、精密検査を受けることになります。精密検査としては、胃直接Ⅹ線検査や胃内視鏡検査があり、胃内視鏡検査で病変が認められた場合は、生検(バイオフシー)といって内視鏡でみながら胃の粘膜の小さな組織切片を採取し、これを顕微鏡検査で調べてがんかどうかを判定します。ところで、がん検診で要精検と判定されると、がんと断定されたような気分になり、非常に不安になってしまう人が多いようですが、そんな心配はいりません。胃がん検診で要精検と判定されたものの中で、実際にがんであったものの割合は1~2%でしかありません。
大腸がん検診では、便潜血検査(便の中に肉眼ではわからないほどの血が混じっていてもわかる検査)を行います。便潜血検査で陽性となり、要精検とされると、精密検査としてバリウムによる注腸造影検査、あるいは大腸内視鏡検査を行います。大腸内視鏡検査は苦痛を伴うといわれていましたが、最近では内視鏡や検査時の麻酔が改良され、以前に比べてはるかに楽に検査が受けられるようになっています。大腸がんの中には、早期のものでは出血しないものもあり、このようながんは便潜血検査ではチェックできないため、大腸にポリープがあったり、家族に大腸がんになった人がいたり、潰瘍性大腸炎、クローン病の既往症があるような大腸がんになりやすい要素のある人は、是非年に1度は大腸の内視鏡検査を受けられることをお勧めします。
平成18年4月