- ちょっとした怪我の応急措置
- 投稿者:石橋外科医院 院長 石橋 雅彦
日常よく経験する怪我で医療機関を受診する前の応急手当てについてお話してみましょう。
ちょっとした知識のあるなしで後の治療がやりやすかったりやりにくかったりするのですが、意外と正しい処置がなされていないものです。
1.切り傷
切り傷の場合やはり問題になるのは出血でしょう。勢いよくポタポタっと血が出ると慌てるものです。
基本はやはり押さえること。よほどの大出血でなければほとんどの出血はコントロールできます。清潔なものにこしたことはありませんが、手近な布きれでもなんでもかまいません。
ティッシュは後の処置の邪魔になることがあるのであまりお勧めではありません。いろんな「こな」をかけたりタバコの葉などを振りかけられるときもありますが、やはり処置の妨げになるしさほど効果もありません。またよく指などを縛ってこられますが、上手くやらないと静脈だけ圧迫して動脈が止まらないとかえって出血を助長することさえあります。とにかく一生懸命押さえる。
これが基本です。
2.削創
皮膚を削ぎ落とした傷のことです。もともと包丁がメインでしたが最近スライサーの普及で増えています。傷が浅い割りに面積が広いのでけっこう出血します。やはり基本は押さえることでよほどのことがない限り押さえるだけで止血できます。よくある間違いは、押さえた後止血を確認するためにまた傷を見る方が非常に多いようですが、それをやるとまた出血しますし、痛い思いもしなければなりません。接着性のいいバンドエイドか何かで押さえたら、そのまま何日も見ないでおけば問題なく出血は止まるしこの種の傷が化膿することは経験しません。
3.擦過傷
いわゆるすり傷ですが、これについては一言だけ。とりあえず流水で洗いましょう。泥や砂を落とすだけで治りが早くなります。なにより困るのが細胞が異物を食べてしまって色が残ってしまうことがあり外傷性刺青と呼ばれます。顔に色が残ると困ります。擦り傷も原則化膿はしません。一見汚い膿のような滲出液が出ますが、体の外に出るものは害はありませんので化膿したわけではないのです。
4.火傷
やけどは専門外ですが、応急処置が正しくないことがしばしば見られます。火傷は温度と時間で深さが決まるため、医療機関に来る前に運命は決まっています。焼く温度は選べませんので、問題は時間です。1秒でも早く水にさらして、温度を下げることが全てです。服の上から熱湯を浴びると直に浴びるよりも深い火傷になりがちです。服にしみ込んだ熱湯が長く留まるからです。服ごと水にさらせばいいのですが多くの方は服や靴下を脱いで火傷を被害状況を確かめてから水にさらします。。服を脱ぐその数秒が傷跡の残る火傷になるかどうかの境になることもあるのです。
5.異物
異物は時にはとても難しいものです。傷を見ただけでは異物が入っているかどうかさえわからないことも多く、実際異物をうまく取れなくて困った経験のない医者はいないでしょう。これは応急手当というより絶対取れるという自信がない場合は中途半端に扱わない状態で診せていただきたいということです。
異物の周りにつついた針穴がたくさんあってどれが元の傷かわからなかったり、半分だけちぎれて取れて奥に残ったりするとよけいに難しくなります。
とは言ってもやっぱり異物は難しい、、、
6.お年寄りの剥離創
ちょっと特殊ですが、皮膚の薄くなったお年寄りが腕や足を何かにぶつけて薄い皮膚がベロッと剥がれたようになることがよくあります。薄く剥がれてくちゃくちゃに見える皮膚もきちんと伸ばして貼り付ければ1週間ほどできれいに治るので、気を利かして切り取ってしまうのだけはしないでください。
思いつくまま日頃気になる応急処置についてお話ししました。細かいことはいろいろ他にもありますがとりあえず今日の内容だけぜひ実行してくださいね。
平成28年12月