- 外反拇趾に対する保存的治療
- 投稿者:さがら整形外科 院長 相良 正志
外反拇趾とは、足の親指が小指側に変形し曲がってくる状態をいいます。主な原因は靴にあると言われており、特に先細のパンプスやハイヒール靴の関与が大きいと言われています。パンプスやハイヒール靴の装着期間と外反拇趾の発生には密接な関係があると報告されています。また、女子では身長の伸びが著しいグローススパートの時期(小学校5、6年生)に外反拇趾角の増加が著しいとの報告もあり、この時期の小児の靴にも注意が必要です。
外反拇趾の症状
外反拇趾は、第1中足骨が内反(内側に広がる)することにより、拇趾が靴の先端で外側に押しつけられ、くの字に曲がることで発生します。そのため拇趾の付け根の内側が突出し、靴が当たることでバニオン(腱膜瘤)と呼ばれる滑膜包炎が生じ、はれ、発赤、痛みが生じます。さらに突出部の横を通る知覚神経が圧迫されると、しびれや痛みが起こります。外反拇趾の多くは、足の縦のアーチがつぶれ偏平足を伴っており、また横アーチがつぶれ開帳足にもなっていることが多いのです。それにより、第2中足骨骨頭が足底に突出して胼胝(タコ)を形成し、足底に痛みを生じます。さらに外反拇趾が進行すると、拇趾が第2趾の下に入り込んで第2趾が脱臼してしまうこともあります。
外反拇趾の保存的治療は、痛みを軽減させることが目的であり、外反変形を矯正できるものではありません。症状が著明で保存的治療で効果ないものは手術治療が必要となります。
運動療法 Hohmann運動
外反拇趾の患者では拇趾内転筋が拘縮(固くなっている)して拇趾外転筋活動が低下しているため、拇趾内転筋のストレッチと外転筋の筋力増強が必要です。代表的なものにHohmann運動があります。重度の変形でなければ、簡便な運動療法によって外反拇趾の予防と除痛効果が期待できます。
装具療法
装具療法のポイントは、外反変形の矯正と第1中足骨内反の矯正です。外反変形が軽症例では、市販の矯正装具でも除痛効果が認められますが、長期の使用でも変形矯正効果は認められません。次に足底板(アーチサポート)は、つぶれた縦アーチを持ち上げることで、足の変形の進行予防効果、しびれや痛みの改善効果があります。
また歩き易く疲れにくい等の歩容改善効果もあります。
日常生活での注意点
最初に述べたように靴の選択が重要です。柔らかい素材で靴の中で足趾が自由に動かせるぐらいのゆとりが前足部に必要です。職業上、パンプスやハイヒール靴を使用しなければならない場合でも、通勤には他の靴を使用するなどの配慮が必要です。乳幼児時期には足の骨格形成のため裸足で歩かせることや鼻緒のある下駄やサンダルを履かせることが大切です。
平成30年4月