- コレステロールについて
- 投稿者:新古賀リハビリテーション病院みらい 院長 大坪 義彦
今回はコレステロールについて話をさせていただこうと思います。
コレステロールと言うと、何か悪者の様な扱いを受けている感がありますが決してそうではありません。
コレステロールは「脂質=あぶら」のひとつで、体の細胞や体の調子を整えるホルモン、食べ物の消化・吸収に必要な胆汁酸などの材料となる大切な物質です。
「あぶら」であるコレステロールはそのまま血液中に混ざり込むことができません。そこで、血液中では水に溶ける性質を持った蛋白質にくるまれ、「リポ蛋白」という粒子になって存在しています(図1)。
リポ蛋白には、肝臓で作られたコレステロールを体の各部に運搬する働きをもつ「低比重リポ蛋白(LDL)」と、反対に体の各部で使えきれずに余ったコレステロールを肝臓に回収する働きをもつ「高比重リポ蛋白(HDL)」があります。
体の各部に運搬する「低比重リポ蛋白(LDL)」の量が多すぎると、血管の壁に必要以上にコレステロールが蓄積してしまい動脈硬化が進行しやすくなるため、このリポ蛋白に含まれるコレステロール(LDLコレステロール)は「悪玉コレステロール」と呼ばれます。一方、体の各部から肝臓に回収する「高比重リポ蛋白(HDL)」が多いほど動脈硬化の進行は抑えられるため、このリポ蛋白に含まれるコレステロール(HDLコレステロール)は「善玉コレステロール」と呼ばれます(図2)。
病院を受診したり、検診を受けたりした時に「悪玉コレステロールが多い」と説明されることも多いと思いますが、それは、「動脈硬化が進み、脳梗塞や虚血性心臓病(狭心症や心筋梗塞)の危険性が高いですよ」と言われていることと同じなのです。
血液検査でLDLコレステロールが140mg/dL以上の時に高値と判断し、この様な方は治療が必要となります。
治療は、長年の生活習慣を改善すべく、まずは禁煙、食事療法、運動療法からはじまります。
食事療法については、表1および図3を参考にして下さい。
なお、卵(鶏卵)にはコレステロールが多く含まれているため、「卵は1日何個まで?」とよく話題になりますが、食べても含まれているコレステロールがそのまま血中のコレステロールとなるわけではないこと、卵にはたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素がバランスよく含まれていることより、1日1個を目安にとり入れるのが、上手な付き合い方といえるでしょう。
運動療法については、表2を参考にして下さい。
ウォーキング・サイクリングなどの有酸素運動が効果的です。少し汗ばむくらいの運動を1日合計30分以上、週3回以上行いましょう。
食事療法と運動療法で充分に数値が改善しない場合は薬物療法を行います。ただし、すでに動脈硬化による疾患を発症されている方は食事療法・運動療法と同時に開始します。
薬物療法でよく使用されるのがHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)であり、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンなどがあります。他には小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブ、PCSK9阻害薬であるエボロクマブやアリロクマブなどの薬剤があります。かかりつけ医の指示に従って服用してください。
脂質異常症は高血圧や糖尿病と同様に、数値が高くなってもすぐに自覚症状が現れるわけではありません。しかし、将来、重大な病気を起こしてしまう危険性がありますので、ぜひ放置せず医師に相談なさって下さい。
平成30年6月に、とみた内科循環器科 富田英春先生が「個別の状態を加味した高コレステロール血症の治療」を投稿されていますので、こちらも是非ご覧になって下さい。
アステラス製薬 医師と始めるコレステロール徹底ガイドより引用
So-net M3 高脂血症より引用
第一三共株式会社「コレステロールが異常といわれたら」より引用
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」より引用
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」より引用
令和4年10月