- 「線維筋痛症」って、なに?
- 投稿者:林整形外科クリニック 院長 林 晃一
平成26年12月3日NHKの番組「ためしてガッテン」に「マッサージでも治らない、長引く痛み治療最前線」という見出しで取り上げられて、いろんな治療でも、ほとんどの医者がさじを投げ出したところで、ある名医と出会った、適確に診断、治療されて、ほぼ治りましたという「長引く痛み治療最前線」が放送されました。すると、翌日すぐに電話がかかって来ました、「どうも自分がその病気じゃないかという気がして、テレビ中に言われたとおりに体を押してみて、番組中の患者さんとそっくりな症状が出てきた…こちらでそういう病気を治療して貰えませんか?」と、「はい、でも私が貴方様を診察してみないとそういう病気かどうか判断できませんが、一度診察しに来ませんか」と返答しましたら、2~3日後にその患者さんは来院されました。幸いに私もその番組を見ましたので、それなりの知識を武装してきました。
初診時に病歴を聞くところから始まり、まず既往歴を聞きますと、幼少時のけがから、罹った病気と行った病院の治療、医者の対応まで詳細にすらすらと話してくれました、なかに精神科にもかかったが不幸に医者とうま合わずに、かなりうつ気分と不眠症を悩まされています、糖尿病も罹ってインスリンの自己注射までされています、四肢の痺れ感が強くて脊損センターにも受診されましたが、CT, MRIに異常なしと言われました。なんと延々たるの既往歴と治療歴を私の頭脳にインプットしました、かなり多彩多様な履歴であります。
しっかり喋って貰いましたら、私は人体図を取り出して、体の痛いところを患者さんに記して貰いました、それから今度は私が記して貰った痛いところと診断基準に記載した18か所圧痛点を押してみました、「痛い~~」「痛い~~」といい、おまけにもう一か所診断基準に載っている18か所以外のところを押してみましたら、「ああ~痛い、痛い」と悲鳴に近いあげ声をしました、「何で今までそこの痛みを分からなかったか、新しい発見だ!」と言いました。
線維筋痛症は、米国リウマチ学会(ACR)の1990年の分類基準で、
・体の広範囲にわたる痛み
・痛みが3か月以上続く
・18か所の腱付着部の圧痛点のうち、11か所以上で痛みがある
と、定義されています。
また、第2の病気が存在してもよい、とされています。線維筋痛症は、血液検査などで異常がでないリウマチ症状、MRI検査などで異常が見つからない日常生活に支障をきたす体の痛み、脊髄や脳の痛み伝導経路の異常にも含まれるのではないか、と考えられています。
以上の診断基準に照りあわせて見ますと、この患者様は線維筋痛症を否定できません、診断しても良いと思います。
診断しましたら、今度は治療に移ります、かなり多い薬を貰って治療されているので、出来れば薬を少量で行きたいですが、果たして上手くいけるかどうか心配です。
まずわが国に承認されている唯一の薬プレガバリンはファストチョイスでしょう。しかし他科からも抗うつ剤が投与されていますので、少量から慎重にいくは無難です。その足りない分を漢方薬から補う、そして糖尿病性神経障害はビタミンB12から補いましょう。一応3剤で様子を見ながら治療していこうと決めました。ほかの多発愁訴を物理療法で対応しています。その後の2回目、3回目はかなりの手答えを感じましたが、このままで治まるかどうか、これからの推移はお楽しみです。
平成27年2月