- うれしきこと
- 投稿者:柴田メンタルクリニック 院長 柴田 史朗
昨年は特にうれしいことが2つありました。
一人は30代の男性。数年前、不安障害を生じ、当クリニックを初診。
月に1~2回通院していました。仕事中も不安で不安でたまらず、情けない、切羽つまった顔をして診察に来られていました。
確認強迫もあり「大丈夫ですね。大丈夫ですよね。」と毎回のようにくり返します。私も、「情けないなあ」という気持ちを持ちながらおつきあいしていたのですが、ここ半年間ぐらいであれよあれよという間に不安が消え、どっしりとした風格がでてきました。
半年前に上下関係の密な集団のトップに任じられたのがその誘因でした。子分のような後輩たちのめんどうを見ているうちに本来の患者さんの長所が現われて来たのでしょう。
本当にこの人が以前くよくよくよくよくよくよ悩んでいた人なのか、と驚くと同時に、役は人をつくり、病までなおしてしまうのだなあとうれしく思いました。
もう一人は50代の男性です。この方も不安障害で何年も通院していた方です。仕事が忙しく、疲れがたまり、そこに家庭でのストレスが重なり、不安障害を発症しました。
強く不安を訴え、涙目になることもありました。
一昨年から昨年にかけて家での心配事が一つ一つ解消し、末っ子も無事就職。
あいかわらず仕事は残業つづきできついけれど、子供たちと妻(良く出来た人です)に「お父さん、これまで働いてくれてありがとう。でも先が困るからもう少し働いてね」と言われたとうれしそうに話します。
子育ての経済的なプレッシャーからも解放され、以来、不安の量は格段に減り、グチの言い方も笑顔まじりです。
人は病気になると性格が裏目に出ることが多く、その人の弱点が露呈しがちです。我々の仕事は「裏が表にかえり、その人本来の長所が出てくる」ためのお手伝いをすることです。
こうしたお手伝いが出来るということはとても楽しく幸せなことです。
また、病気をしたことでさらにその人が味わい深く立派な人になってゆくのを見るのはもっとうれしいことです。
ちなみに上掲の写真は、私の葬式に使うことにしているものです。
イヌが居ないと生きられない人間のことを欧米ではdog peoplと呼んでいるようです。私はこのイヌの尻尾につかまり、ともに天国に昇ってゆきたいと願っているのですが、生前の悪行がたたり、途中から私だけ地獄に落とされるかもしれません。
平成27年1月