- 肝臓がん(肝細胞がん)
- 投稿者:中原内科クリニック 院長 中原 俊尚
わが国の死因の第1位はがんですが、がん死の中で肝がんは男性は胃がん、肺がんに次いで第3位。女性は胃がん、肺がん、大腸がんに次いで第4位です。
原因は肝硬変に合併することが多く。肝硬変症は、急性肝炎、慢性肝炎と肝障害が治癒せず慢性に経過した終末像と考えられ、重要な病因は肝炎ウィルス (B型、C型の持続感染)とアルコールです。C型抗体測定が可能となった今、今までアルコール性と考えられた肝硬変の中に、C型肝炎ウィルスと共存する例が多いことも分かってきました。
B型慢性肝疾患は、母子間感染や乳児期の感染によるB型キャリアとなった約10%から進展した例がほとんどですが、B型肝炎ワクチンの普及で百年でB型肝炎はなくなるといわれています。また、健康な人がB型肝炎に感染し急性肝炎を発症しても、一過性感染で完全治癒するものがほとんどです。
C型は母子感染は極めてまれですが、C型急性肝炎発症は60~70%がC型慢性肝炎に移行するといわれています。C型抗体の測定が可能となり、輸血後肝炎の90%は減少すると考えられます。現在、C型慢性肝炎のインターフェロン療法により、C型肝炎ウィルスの30~40%がなくなります。これは肝炎が治ったということです。現在、ウィルス本体は発見されていませんが、C型ウィルス量まで定量できる今、急性肝炎での使用可能となれば80%の人が肝障害から解放されると考えます。
アルコール性肝硬変の定義は、1日3合以上で5年以上の常習飲酒家とされています。アルコール性肝障害は脂肪肝になることが多く、アルコールを中止すると完全に正常な肝臓に戻ります。しかし、肝炎ウィルス感染者がアルコールを飲用すると、いっそう肝障害を促進する因子にはなるようです。
肝硬変症の合併症(食道静脈瘤、腹水、肝性脳症)の治療法や管理の進歩により長期生存が可能となったため、新たな合併症として肝がんの発生が増加したともいえます。今後B型キャリア、C型抗体陽性の人は、半年に1度の肝機能検査を受け、結果異常なければ、このまま経過観察でよいと考えます(病変が進まない慢性肝炎もみられます)。また、肝硬変とそれに近い慢性肝炎の人は、月1回の肝機能検査と、3ヵ月に1度の肝エコー検査を厳守してください。 肝機能が変動するB型キャリア、10年以上経過したC型慢性肝炎の人は、3ヵ月に1度の肝エコー検査を厳守してください。
最後に正常な肝臓の人からの肝がんの発症はみられません(ご心配はいりません)。