- 背部・腰痛
- 投稿者:林整形外科クリニック 院長 林 晃一
背部・腰痛は二本足歩行に進化した人類の「宿命」と言われるほど、悩んでいる人は大勢います。
では、背部・腰痛とはどんな病気でしょうか。ほとんどは過度な力仕事や姿勢の悪さでの背骨の損傷ですが、一部は整形外科系(筋肉、靭帯、骨格)や内臓系の病気により生じた背中や腰、大腿部の痛みのことを指しています。具体的にどんな症状かということ、こわばり感を伴った疼痛が多いようです。痛みの性質には鋭い痛み、重苦しい痛み、足にまで伝わる電気が走るような痛み、足のしびれや刺すような痛みなど人によってさまざまです。また、首のこりや発熱、力が抜けたような感じ、排尿障害、歩行障害が起きる場合もあります。
原因疾患はいろいろあります。分かりやすいように、「脊椎のしくみ」に少し触れてみましょう。
脊椎は「脊柱」ともいい、首からしっぽ(尾骨)まで一つ一つの椎体の積み重ねと、まわりの筋と筋肉との支えで、体を自由自在に動かすことができるいわば身体の柱です。椎体と椎体との間に弾力性のある軟骨(椎間板)がはさまれ、クッションの役割をしています.椎体の後ろに両側の椎弓から輪となって、上から下まで一つの空間を作っていて、そこには脊髄神経が通っています。
背部・腰痛の原因の多い順にあげてみます。
①筋・筋膜性疼痛=過労や激しいスポーツによる筋膜の炎症。腫れ上がった筋膜が周囲の知覚神経を圧迫、牽引することにより起こります。
②椎間関節性疼痛=椎間関節の不適合(椎間関節症)より生じたものです。脊椎分離症や椎体のずれ(辷り症)など。
③神経根性疼痛=神経根が何らかの原因で圧迫され、その神経の支配領域に疼痛としびれ感が現れます。ひどくなると歩行障害まで起こります。椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍の硬膜外圧迫。
④椎間板性疼痛=椎間板の変性により背骨が受けた重力、衝撃の緩和ができなくなります。変形性脊椎症。
⑤仙腸関節靭帯の障害による疼痛=骨盤と仙骨との関節の適合性が悪いため生じた仙腸関節症。女性のお産後に見られる腰痛です。
⑥骨性疼痛=骨粗しょう症による椎体圧迫骨折、脊椎炎(細菌・結核感染)、脊椎骨腫瘍など。
⑦交感神経性疼痛=各臓器によりそれぞれ特有な疼痛の放散が認められます。胃・十二指腸疾患では背部に疼痛が放散し、胆石症では右肩・背部へ、すい臓疾患では背部・左肩に放散します。また、腎臓結石、腸の疾患や女性の卵巣、子宮の疾患では腰痛が見られます。まれに白血病、多発性骨髄腫、解離性大動脈瘤も背部・腰痛が超こります。
各々の疾患治療については原因によってかなり違いますので、自己診断しないように各専門医の診察と適切な治療を受けることが賢明でしょう。