- 腸内細菌の働き
- 投稿者:RINDENクリニック 院長 林田 啓介
NHKのテレビで腸内フローラ(フローラ:花畑・・)の番組を見られた方も多いと思います。
腸は「第2の脳」と言われるほど脳からの指令なしに独立した多種多様の働きをすることがわかっています。そして脳の次に多い神経細胞を持った臓器です。それは食べた食物の成分に合わせて種々の腸管センサーが反応し消化管ホルモンを出して、栄養分の消化吸収を行うこと。また腸の粘膜や腸内細菌は食物の中の外敵(細菌など)の侵入を防ぐバリアーと外敵の排除などの働きをします。
この数百種、百兆個以上といわれる腸内細菌が腸内フローラと呼ばれる腸内細菌叢(叢:草むら・・)を形成し、腸管からの栄養吸収、腸の免疫、病原体の感染予防などに働いており、老化にも関係があるといわれます。・・最近では肥満、糖尿病や動脈硬化、ある種のアレルギー(喘息、アトピーなど)との関連が知られるようになって注目されています。これまでは腸内細菌の培養が困難だったこともあり腸内細菌の働きはよくわかっていませんでした。しかし遺伝子解析の技術が進んだことにより、腸内フローラの解析ができるようになったことも大きいようです。
腸内細菌の働きとしては、善玉菌の代表格であるビフィズス菌は糖を代謝して酢酸を産生する、酢酸が多く作られると病原性大腸菌(O-157)の炎症から防御する力が増加するなど、外から入ってきた菌に抵抗する働きが増加します。
ある腸内細菌は我々が持つ消化酵素では分解されない、難消化の食物繊維も消化できることから免疫に関係した物質が増えることもわかってきました。
腸内細菌のバランスがいろんな疾患と関係しており、良いバランスを保つことが健康維持や老化防止には大切です。良いバランスとは善玉菌を増やし、腸内に酸を増やすことで酸に弱い悪玉菌を住みにくくすること、そのためにはストレスを少なくして、食事を含めた生活習慣の改善が必要です。
悪い腸内フローラを改善して病気を治す目的で、健康な人の便を移植(直接腸に注入)する治療も行われています。
昆布、ワカメ、ノリなどの海藻類を水にもどすとぬるぬるしますが、このぬめりが水様性の食物繊維でコレステロールの吸収を妨げ、血中のコレステロールを下げ、動脈硬化を防ぐことになります。またビフィズス菌の餌となるオリゴ糖(大豆、ゴボウ、アスパラカス、玉ねぎ、はちみつ)やブドウ糖を食べる納豆菌も腸のバランスを整えます。
日常生活での腸のバランスの目安は、便の性状(におい、形、硬さ、量)で判断します。強く臭わない、小さめのバナナ状で数本の量、水に浮く程度の硬さが理想的な便です。健康維持と老化防止に腸は大きな働きをしています。
平成27年11月