一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 緑内障との付き合い方
  • 投稿者:はたせ眼科 院長 畑瀬 真智子

緑内障は、視神経が障害されることによっておこり、その視神経変化と対応する、視野異常を特徴とする病気です。通常、眼圧を十分に下降させることにより、視神経障害を改善、もしくは抑制しうるとされています。いくつかの病型に分類されますが、ここでは、その話は省略します。40歳以上において、緑内障の有病率は5%位ですが、加齢とともに、男女ともに増加し、40歳台で2%であるものが、70歳以上では12~14%となります。日本では、緑内障が失明原因の上位3つのうちのひとつです。もしあなたが緑内障と診断された時、どういう心構えで臨めば良いのか、そういうことについて、述べてみたいと思います。ここでは特に慢性の経過をたどるタイプの緑内障について、述べます。視神経の障害がゆっくりと進むものでは、自覚症状がほとんどありません。障害が長く続くほど、視神経は死んでしまい、再生することはありません。だから、早期発見、早期治療がとても大切なのです。
治療は眼圧を下げることが主となり、治療前の眼圧の20~30%減を、理想とします。そして、眼圧のみでなく、視力や視野の検査を半年から1年毎に行い、眼底検査で視神経の状態を観察し、進行の有無、進行しているなら、どのくらいのスピードで進行しているのかを判断します。1~2年の変化を見るのみでなく、5~10年或いは15~20年の長い期間での変化を見ることも必要です。今の治療で、進行が抑えられているのか、ゆっくりとでも進行しているなら、その人が平均寿命まで生きるとして、その間、生活に支障ない、良好な視機能を保てるのかを判断しなければなりません。その上で、もっと進行を抑える必要があるなら、点眼薬を増やすこと、最大限点眼薬を増やしても進行を抑制出来ない時は、眼圧を下げる手術も検討しなくてはなりません。
この病気の治療を継続していく上で、難しい点は、患者さんにとっては、自覚症状がないか、少ない時に治療を始めなければならない場合が多い事(早期発見、早期治療が大切なのです)、長期間(ほぼ一生の間)治療を続けないといけない事です。誰でも病院通いなど、長く続けたくはありません。
また、治療の効果が、目に見えて実感できるものではないということがあります。あえて言うなら,両眼とも同じ程度の緑内障がある人に、片眼のみ治療して、もう片眼は無治療で経過を見れば、10~20年たってやっと、その差に気付き、治療の効果、意味を悟るということです。
また、ある程度緑内障が進行してしまい、見えにくさを自覚してから、治療を始めた患者さんの中には、不安に駆られ、性急な治療効果を求めたり、逆に「どうせ治らないのでしょ。」と投げやりな事を言われ、治療を中断してしまったり、視力や視野の検査を拒否される方もいます。
昔は、緑内障といえば、かなり見えなくなってから、発見されることが多かったのですが、今は早期発見も可能となり、治療薬もずっと効果的なものが、多種類できており、今後も新しい薬が出てくるでしょう。手術まで必要になる例は、かなり減少していると思います。また、再生されないといわれる視神経を再生できる治療法が、将来、発見されるかもしれません。希望を失わず、焦らず、今出来る治療を、根気よく受けて戴きたいと思います。目にとって、視神経は命のようなものです。眼圧を下げる目薬は、その一滴一滴が、大切な視神経の寿命を、出来るだけ長く延ばすための手立てだと考え、一回でも疎かにせず、きちんと用法どおりに続けていきましょう。

平成24年9月

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