一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 「強迫症(強迫性障害)について」
  • 投稿者:蒲池病院 院長 實松 寛晋

 強迫症(強迫性障害)という病気をご存じですか。
「手が汚れているのではないかと気になって仕方がない」「戸締りが気になって仕方がない」など、ある特定の考えが自分の意思に反して繰り返し浮かび、それによって引き起こされる不安や恐怖などを打ち消すために、「何度も手を洗う」「戸締りを何度も確認する」などの同じ行動を繰り返すのが「強迫症」の症状です。このように自分で考えたくもない内容の考えが、繰り返し浮かんでくることを「強迫観念」、その不安を打ち消すためにする繰り返しの行動を「強迫行為」と言います。
 病気が悪化すると、入浴に何時間もかかりお風呂から出られなくなったり、確認をしないといけないため家からひとりで外出できなくなったりする人もいます。徐々に強迫行為をしないといけない場面を避けるようになり、できないことが増えていくことも多いです。単に「心配性だから」と言われる人もいますが、「強迫観念」や「強迫行為」によって生活に支障が出ている場合は、治療を受けると楽になるかもしれません。

 
 強迫症の治療は、認知行動療法と薬物療法が有効とされています。認知行動療法では「曝露反応妨害法」という技法を用いることが多いです。これはあえて強迫観念が浮かんでくるような場面に直面し、不安になっても強迫行為をせずに時間経過と共に不安が自然に下がってくることを体験する方法です。繰り返し行うことで、強迫観念が浮かぶような場面に直面しても、徐々に不安を感じにくくなっていきます。
 一方の薬物療法では、抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)がよく使用されます。最初は少量から始め、副作用の出現に注意しながら徐々に服薬量を増やしていきます。
 

 強迫症かなと思われる症状で困っている方は、気軽に受診されてください。「精神科、心療内科を受診するのはちょっと・・・」と思われる方は、保健所や精神保健福祉センターでも相談できます。強迫症は、強迫行為をすればするほど、苦手な場面を避ければ避けるほど、症状が悪化していく病気です。悪化すると治るまでに時間がかかり、治療にエネルギーが必要になります。強迫症かなと思ったときは、早めの受診、相談がお勧めです。

 

 

令和6年8月

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