- やせメタボ(?)の話
- 投稿者:権藤内科循環器科 院長 権藤 秀之
そもそもメタボとは メタボリックシンドローム(以下メタボと略)と言えば、中年で血色が良く、よく食べて、よくお酒を飲んでいるでっぷり太った男の人を想像されると思いますが、太っていなくても条件によってはメタボと同様の病態になることがわかってきました。
メタボの診断基準はまず、腹囲が基準値(男性で85cm、女性で90cm)をこえていて、次の3つの条件のうち2つ以上を満たす人が該当します。①空腹時血糖値が110mg/dl以上。②中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上かHDLコレステロール値が40mg/dl未満、③血圧が130mmHg/85mmHg以上。
メタボの人は、内臓脂肪が多くて糖尿病をはじめとする生活習慣病になりやすく、心臓病や脳などの血管の病気につながりやすいことがわかっています。
肥満の指標 これとは別に肥満の度合いを示す指標にBMI(ボディー・マス・インデックス)があります。これは 体重(kg) ÷ {身長(m) × 身長(m)} で表され、18.5以上25未満を普通体重、25以上30未満を肥満(1度)、30以上35未満を肥満(2度)、35以40未満を肥満(3度)といいます。
太っていないメタボ 最近の研究によると、BMIが23~25(肥満の診断基準にはいらない=肥満ではない)人でも心血管代謝リスク因子(上にあげた高血糖、脂質異常症、高血圧のいずれか)を1つでももっていると骨格筋のインスリン抵抗性を認め(筋肉の質が低下し糖尿病になりやすくなっているということ)、そのレベルは肥満メタボ群と同等ということが判りました。すなわち太っていなくても心血管代謝リスクを合併している人では、メタボの人と同じように糖尿病や心臓病、脳血管障害になりやすいということです。
このようなやせメタボは全国で推計914万人にのぼり、推計971万人とされた普通のメタボの人数に匹敵します。健康な人と比べた脳卒中などの発症の危険度は、やせていても心血管代謝リスク因子が一つあると男性1.78倍。女性2.21倍、二つ以上あれば男性1.91倍、女性2.54倍と高く、普通のメタボと同じ水準です。
運動こそが治療 このようなやせメタボの人は生活習慣に特に注意を払う必要があります。運動については、日々の生活での活動すなわち「生活活動量」を増やし、筋肉に負荷のかかる運動(スクワットやダンベル、腕立て伏せなどの筋トレ)を取り入れて、筋力を向上させることが勧められます。「生活活動量」はふだんの歩行や階段の昇り降り、荷物の上げ下ろし等の運動量を意味しますが、普通に歩くだけでは体力の向上はそれほど期待できません。持久的な運動能力は、強度をある程度高めた「速いウォーキング」や「ジョギング」などで高めることができます。犬の散歩などでただ単に歩くだけでなく、息が上がるくらいの速歩やランニング、水泳などで日々筋力を少しずつ鍛えることがやせメタボの予防につながります。
平成30年1月