一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • コロナ禍で増加。新たな脂肪肝「MAFLD」とは?
  • 投稿者:神代病院 院長 髙田 晃男

・コロナ禍の影響で運動不足や食べ過ぎが増え、脂肪肝患者が増加

 最近、3年以上繰り返したコロナ禍の影響で、外出やスポーツジムでの運動自粛で運動不足となり、自宅での高カロリーのジャンクフードの摂取や過食が続いた結果、肥満が原因の脂肪肝や、外出制限によるストレスで飲酒量が増え、アルコール量増加が原因の脂肪肝のかたが増えています。運動はストレス解消に役立ちます。しかし今後コロナ禍が落ち着いても、一旦たるんだ体と気持ちは直ぐには引き締まらないとは思いますが、まずは散歩をしたり、体操やストレッチなどで体を動かすよう努めるべきです。

 

・NAFLD(ナフルド)からMAFLD(マフルド)

脂肪肝とは肝細胞に中性脂肪が蓄積された状態を言います。その原因は主に過栄養または過飲酒です。日本では脂肪肝のかたが非常に多く、約 2000 万人いると推定されています。 脂肪肝のかたの多くは肥満や糖尿病などの代謝異常を合併してます。近年、代謝異常は肝線維化(肝臓が固くなる)の進展、肝がんの発症、動脈硬化による心血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)の発症など、患者さんの生命に深く影響することが明らかになっています。

 

脂肪肝は約25年前ぐらいより、飲酒量が少ないかあるいは飲酒をしない非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD :Non-alcoholic fatty liver disease飲酒量の多いアルコール性脂肪肝(AFL:alcoholic fatty liver)におおまかに分けられていました。

アルコール量で分類すると、

少量(非アルコール性):飲酒量がエタノール換算で男性30g/日未満、女性20g/日未満

中等量の飲酒:飲酒量がエタノール換算で男性30~59g/日、女性20~59g/日)

大酒家(アルコール性):飲酒量がエタノール換算60g/日以上

 

①が非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)で③はアルコール性脂肪肝ですが、

問題は②の中等量の飲酒のかたで、非アルコール性からもアルコール性からも除外されるため、病気としての意義の検討が不十分でした。最近の研究では、中等量の飲酒は肝線維化(肝硬変の進展)のリスク因子であることがわかってきました。

 

 

2020年4月、日本はコロナ禍の第1波で世界中で新型コロナ感染に恐れ震えていた頃ですが、世界各国の肝臓専門医が集って(リモートも含め)議論した結果、代謝 異常に関連する脂肪性肝疾患MAFLD:metabolic dysfunction-associated fatty liver disease)という新しい疾患概念が提唱され、現在では医学会では一般化してきています。

 

MAFLDの診断基準は、

過体重・ 肥満(日本人では BMI≧23 kg/m2)

2型糖尿病

③ 痩せ・正常体重では 2 項 目以上の代謝異常(高血圧症、内臓脂肪蓄積、耐糖能異常、脂質異常症)

 脂肪肝と以上の3項目のいずれかが1つ以上ある状態をMAFLDと定義されました。(アルコール歴、他の肝疾患原因の有無は問わない。)

 

MAFLDは、脂肪肝と代謝異常を合わせた新しい捉え方で、“危ない脂肪肝”を早期に発見して治療をするために提唱されました。また脂肪肝患者さんの、肝臓だけでなく体全体の予後を意識した疾患定義でもあります。肥満や2型糖尿病などの代謝異常があると、脂肪肝はさらに進みやすくなります。MAFLD疾患概念は消化器・循環器・内分泌代謝といった多面的視点から脂肪性肝疾患に取り組むのに役立つと期待されます。現在まだMAFLDの保険適応の薬はありませんが、代謝疾患薬を中心とした臨床研究も進んでおり、数年後には治療薬の出現が期待されてます。

 

・エコー(超音波)検査の重要性

最後に、脂肪肝自体はお腹のエコー(超音波)検査で概ね診断可能です。最近のエコーの機械では脂肪の量や肝臓の硬さを数値化して示す装置もありますので、最近太ったなと心配しているかたや、糖尿病等の代謝疾患をもっているかたは、是非、エコー検査を受けられてください!

 

 

令和5年5月

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