- ピロリ菌のはなし
- 投稿者:石橋外科医院 院長 石橋 雅彦
最近胃のピロリ菌が何かと話題を集めています。そもそもピロリとは、胃の出口ピロルからきた言葉で、実は意外と古い歴史があります。
1892年にイタリアの学者によって発見されましたが、その時は菌を培養することができなかったため、胃の中のような酸の強い場所で生息する菌はいるはずがないとして、その業績は無視されてしまいました。1983年、オーストラリアの学者マーシャルがピロリ菌の培養に成功し、さらにマーシャルは自分でピロリ菌を飲むという実験により、それまでストレスが原因と考えられていた胃炎や胃潰瘍の発生にピロリ菌が関与していることを実証したのです。
その後ピロリ菌の研究が一躍盛んになり、胃炎 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ある種のリンパ系の発生に関係していることがわかり、さらに最近では胃癌の発生にも強く関わっていることが明らかになってきました。
胃癌は日本人の癌で肺癌についで第2位を占め、ピロリ菌は20代で約25%、40歳以上では70%、潰瘍歴のある人では80%の人が持っていることがわかっています。
ピロリ菌の有無は尿素呼気テスト、血液や便の抗体検査、胃カメラによる検査などで調べることができます。
ピロリ菌の除去には2種類の抗生物質と制酸剤を組み合わせた3種類の薬を一週間服用します。
ピロリ菌除去が始まったころは80%程度の除菌率でしたが、耐性菌の出現により70%ほどに低下したため、今は除菌の失敗例には第2世代の薬の組み合わせによって高い除菌率を得ることができます。さらに第3世代の薬も開発が進んでいます。
ところで最近ピロリ菌の除去に大きな変化がありました。それまでは主に胃十二指腸潰瘍歴のある患者さんだけが保険でピロリ菌除去ができ、それ以外の人は保険がききませんでした。それが今年の2月から制度が改正され、胃カメラで胃炎と診断されたピロリ菌の保菌者も医療保険でカバーされるようになりました。これによってピロリ菌除去がこれまで以上に普及すれば、将来胃癌の発生頻度を減少させることが期待されています。
平成25年6月