- 中高年の膝の痛み
- 投稿者:上野整形外科医院 院長 上野 博章
膝関節は形のうえで、下肢の三大関節(股、膝、足関節)の中で最も不安定な関節である。横から見た形は、後下方に少し傾いた平面の上に卵形のものが乗っている状態である。だから、体重がかかったときそれを支持するために、4本の強いスジ(靭帯)と筋肉と関節包で安定固定させる。また、関節面の軟骨はお互いに摩擦がほとんどなく、氷の上で氷を滑らせる以上に抵抗なく動く。
このような形態上の特殊性のために、膝関節は加齢と共に変形し、痛みが出現しやすい。特に40歳を過ぎると関節軟骨の変性(関節軟骨の光沢が失われ、亀裂が入り、進行すると関節軟骨のくずが関節腔内に脱落する)が進み、変形性膝関節症(以下膝OAと略す)が起こる。
膝OAの痛みはほとんど膝の内側であり、歩行時、階段の昇降時および動作の開始時(正座からの立ち上がり時など)にみられる。その他、膝の疲労感、量感、膝の後面のこわばり感などである。進行すると、長距離歩行で痛みが出現する。また、正座やしゃがみ込みなどの日常生活動作が障害され、ときには関節に水がたまることもある。最終的には、O脚変形が増強し、つえが必要になる。
膝OAの発生は女性に多く(男性の約4倍)肥満がしばしばみられる。レントゲン所見では、膝関節の内側のすき間が狭くなり、進行すると骨のトゲがみられる。
以上のことから、膝関節痛が出現しやすい40代より、膝に過度の負担をかけないようにすることが予防の第一である。そのためには、重い物を持つことを控え、肥満にならないように注意して、痛みが出現しやすい階段の昇降や正座は、できるだけ避ける方がよい。
また、膝関節の不安定性が膝OAを進行させることから、筋力増強訓練は最も大切な予防法といえる。訓練の方法は、仰臥位で寝て、患肢と反対の脚を90度曲げて、患肢の膝を伸ばすように力を入れる。患肢をその状態で反対側の膝の高さまで挙上する。次に患肢をゆっくり床に下ろして筋肉の力を抜いてリラックスさせる。この運動を30回から80回ずつ、朝昼夕行う。
このような訓練は、痛みを伴わない程度に少なめより徐々に、また、毎日行うことが大切である。訓練の後で痛みが増強する場合は、訓練を一時中止するか、回数を減らして様子をみる方がよい。訓練の際は温暖療法を併用するとより効果的である。