- 乳がん検診のすすめ
- 投稿者:嶋田病院 放射線科 赤司 祐子
現在、日本人女性の乳がん患者は急増しています。1996年には、がんにかかる女性全体の中で、乳がんになる人は胃がんを抜いて第1位になりました。2005年には乳がんと診断された患者数は5万人を超え、日本人女性16人に1人が乳がんになると言われています。しかも、死亡数も年々増えています。
一方、米国では7人に1人が乳がんになると言われており、日本より患者数は多いのですが、死亡率に関しては、アメリカを始め欧米諸国では90年代より下降しています。 これは、乳がん治療の進歩だけでなく、欧米における1980年代の「ピンクリボン運動」による乳がん検診受診率の向上や乳がんに対する認知度の向上(しこりを見つけたら早めに受診するなど)が関与していると言われています。
Fig 1 乳がんの死亡率、罹患率年次推移(米国と日本の比較)
乳がん検診の受診率は、オランダ88.3%、イギリス 74.1%イタリア71%アメリカ 60.6%と欧米諸国では非常に高いのに対し、日本は23.8%とかなり低いのが現状です。
乳がん検診は、マンモグラフィ、乳腺超音波検査、視触診が主な項目ですが、現在、自治体で実施されているものは殆どマンモグラフィ、視触診です。
マンモグラフィは乳房のX線検査のことで、乳房撮影専用の装置を使用して撮影を行います。手で触れてもわからないような微小な早期乳がんの発見に役立ちます。
Fig 2 マンモグラフィ写真
小郡市では40歳以上の偶数年齢の女性に対し、視触診、マンモグラフィ、を受けることができます。また、30歳以上の女性では毎年視触診を受けることができます。さらに、平成21年度から、4月2日の時点で40歳、45歳、50歳、55歳、60歳に達する女性に対し、乳がん検診無料クーポン、検診手帳が厚労省より配布され、検診受診率50%を目標にしています。H22年の国民生活基礎調査の報告によると、この企画により検診受診率は増加しています。特に乳がん好発年齢の40歳-59歳では顕著で、無料クーポンによる効果と思われます。過去2年における検診受診率として算定した場合、40%を超える受診率が報告されましたが、厚労省の目標値である50%にはまだ到達していません。
自己検診も非常に重要で、痛みのない多くの乳がんを偶然発見することができます。定期的に自己検診を行っていれば、一円玉くらいの大きさ(2cm)以下でしこりを発見することは十分可能です。しこりが2cm以下であれば、早期乳がんの可能性が高く、10年生存率は90%と報告されています。自己検診をしていなければ、胸の違和感に気づいたときにはすでに3-4cmのしこりとなっていたというようなことも時にあります。
また、進行するスピードが遅い乳がんも多く、しこりに気づいていても症状がないため、何年も放置されている場合も見受けられます。しこりに気がついたら、どんなに小さくても、また、痛みがなくても必ず受診してマンモグラフィや超音波検査を受けて乳がんかどうかを調べるようにしましょう。
乳がんは早期発見すれば、かなり高い治癒率が期待できる病気です。
乳がん早期発見のために、ぜひ、乳がん検診に興味を持って、検診を受け、自己触診を定期的に行うことをおすすめします。
平成24年2月