- 個別の状態を加味した高コレステロール血症の治療
- 投稿者:とみた内科循環器科 院長 富田 英春
高コレステロール血症は健康診断などで異常を指摘されることの多い病気の1つで、血液中の脂質成分が異常高値となっている状態です。高コレステロール血症は動脈硬化を引きおこし、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気につながるため、症状がなくても、治療が必要かどうかの見極めが必要です。脂質成分とは、主に、悪玉コレステロールであるLDLコレステロール、善玉コレステロールであるHDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)をさしますが、中でもLDLコレステロールが動脈硬化との結びつきが最も強いことが分かっています。高コレステロール血症の原因としては、生活習慣の乱れ(過食・運動不足・喫煙)や家族性(遺伝子異常)、体質などがあります。
健康診断などで高コレステロール血症を指摘された場合に、皆が画一的に治療が必要になるわけではありません。治療を行うべきLDLコレステロール値は、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎臓病など他に治療をしている疾患(合併症)の有無で変わります。
図1に2017年に改訂された動脈硬化性疾患予防のガイドラインに示された脂質の管理目標値を示します。まず、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症など)の既往歴(過去に罹患したか)を評価します。既往があれば、2次予防となり、LDLコレステロールは100mg/dl以下を目指します。次に、糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患の合併症の有無を評価します。合併症の有無を評価する際に追加検査が必要な場合も考えられます。上記合併症があれば高リスクとなり、LDLコレステロールは120mg/dl未満を目指します。次に、年齢、性別、喫煙の有無、血圧、耐糖能異常、家族歴、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値から、吹田スコアを用いて心血管病のリスクを評価します。図2に吹田スコアを示します。合計点数が40点以下の低リスクであれば、LDLコレステロールは160mg/dL未満に、中リスクでは140mg/dL未満に、高リスクでは120mg/dl未満に治療することが推奨されています。
未治療のLDLコレステロール値が180mg/dl以上の場合には、家族性高コレステロール血症も疑われます。常染色体優性遺伝の疾患で我が国に25万人以上いると考えられています。
ガイドラインはあくまでも治療の指針ですので、年齢、お持ちの病気、体質、その方の人生観などを踏まえ、治療方針を相談、決定することになりますが、検診などでコレステロールが高いと言われた方、糖尿病、慢性腎臓病、脳梗塞の既往のある方などは、ご自分のコレステロール値が放っておいてよい値なのか、医師にご相談頂ければと思います。
図1
図2
平成30年6月