- 先天色覚異常
- 投稿者:小川眼科医院 院長 小川 希
原因
先天色覚異常の原因は遺伝学的に明らかにされています。眼や髪の色と一緒で生まれる前から定められており一生変わることはありませんので治療によって変えることはできません。
治療
先天色覚異常は科学的に根拠のある有効な治療法はありません。しかし自分の特性を知ったうえで適切に対処していくことで日常生活の困難やトラブルを避け日常的にはほとんど不自由のない生活を送ることができます。そのためには早期発見が大切です。また、色覚についての一般的な知識を正確に知っておくことが重要です。
日常生活で注意すること
・色を間違えやすい条件としては、薄暗い環境、物の大きさが小さい、色がくすんでいる、等があります。明るい場所で色を判別させたり、暗い場合には照明を明るくして確認させるようにアドバイスしましょう。色について会話するときには、何色かを問い詰めたり、色の間違いを叱責したり等、子供を傷つけることは避けるようにしましょう。クレヨン等の画材を使うときは、色の名称が記載されているものを使用し、記載されている色の名称を参考にするようにアドバイスしましょう。
・日常社会で使われているシグナルや警告サインの多くは、残念ながら色覚異常の方に配慮されているわけではありません。特に、信号には注意が必要です。正常な色覚の方にとっては赤と緑は最も違いがわかりやすい色であり、赤は止まれ、青(緑)は進め、と設定されています。しかし皮肉なことに、先天色覚異常の多くの方が最も苦手とするのが、赤と緑という組み合わせです。事故につながる危険がありますので、注意が必要です。横並びの信号灯の場合は色光の配列で見分けることができますが、そうでない場合、海外では信号の並びが逆になる場合があります。
・大人になったときでも、色覚異常の見え方を理解することで、日常生活において「間違えそうな場面」がある程度わかるようになります。たとえば、ネクタイや服の色に関して家を出る前に家族に確かめる、伝票の色が見えにくい場合、見分けられるように自分なりの印をつける、といった対策をとることができれば、日常生活のトラブルは少なくなります。
・運転免許取得について・進学や職業選択で注意すること
普通自動車(第一種)はほとんど取得が可能です。進学については、どの大学にも原則として進学可能です。理工系、医歯薬系の大学でも進学は可能です。職業選択にあたっては、本人の希望を尊重して、職種を制限しないことが基本となります。一方で、職種の中には、職業の特性上、色覚異常が問題となる職種があります。(例:電車の運転士・飛行機のパイロット・自衛官・警察官・消防士など) また、色覚異常がハンデとなる職種もあります。(例:印刷・塗装・線維工業・野菜や魚の鮮度の選定など微妙な色識別を要する職種) 地域によっても異なりますので、その都度確認することが必要です。職業の適性の観点から、自身の色覚の程度・傾向や、色覚についての正確な情報を得ておくことが重要となってきます。また、進路の選択に関わってくることですので、早めに知っておくことが大切です。
ここ10数年の間、学校における色覚検査は施行義務がなくなっていたこともあり、多くの学校で色覚検査が行われてきませんでした。そのため、先天色覚異常の方は自身の色覚の違いに気付かず、進学・就職において様々なトラブルが発生した経緯がありました。これを踏まえて、平成26年に、文部科学省から学校における色覚検査についての積極的な周知が通知されたことから、今後多くの学校において色覚検査が実施されることが予測されています。(※H28年度の眼科学校検診では、事前アンケートで希望者のみ色覚検査を施行しています)
(参天製薬HPより許可をとり引用)
平成29年2月