- 前立腺がん検診について
- 投稿者:山下泌尿器科医院 山下 拓也
前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱のすぐ下にあり、尿道の周りを取り囲むように存在しています。精液の一部を産生し、生殖器の一つとして重要な役割を果たしています。
前立腺がんはこの前立腺に発生するがんで、日本における前立腺がんの患者数は年々増加しています。2019年の統計で男性のがん罹患数を部位別にみてみると、前立腺がんが最も多いがんとなっています。
前立腺がんは進行すれば血尿や排尿障害(尿の出が悪い、トイレが近い、残尿感がある、など)をきたしたり、骨転移に伴う骨の痛みなどがおこります。腰痛などで整形外科を受診した際に、骨転移から発見される事もあります。
自覚症状が出てから病院を受診し発見された前立腺がんの場合、その約30~40%は他の臓器に転移しているといわれています。
前立腺がんは早期で発見されれば完全に治せることも多いがんですが、転移があると5年生存率は5割程度に下がってしまいます。
初期の前立腺がんでは自覚症状がほとんどなく発見が遅れることもあり、早期発見のためには「前立腺がん検診」を受診することが重要です。
前立腺がん検診では、血液検査でPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカーを測定してスクリーニングを行っています。
PSAは、前立腺でつくられるたんぱく質の一種で、がんや炎症などにより前立腺組織が壊れると血液中に漏れ出します。PSA検査では、この前立腺から血液中に漏れだしたPSAの量を測定することにより前立腺がんの可能性を調べます。
検診を受けPSA高値(一般的には4ng/ml以上)を指摘された場合、泌尿器科での精密検査が必要になります。
前立腺がん検診の有効性については、定期的な前立腺がん検診を受けることにより進行前立腺がんの罹患率が約50%減少し、死亡リスクが約20%低下することが欧米の研究で分かっています。
また、前立腺がんは50歳を過ぎると罹患率が増加し始めるため、50歳を過ぎたら定期的に前立腺がん検診を受けることが推奨されています。親や兄弟に前立腺がんを発症した人がいる場合、本人が前立腺がんになる可能性も高くなるため、そのような方では40歳代でも一度はPSA検査を受けることが勧められています。
PSA検査は、人間ドックや医療機関を受診して受けることができる他、小郡市では50歳以上の方であれば集団検診で前立腺がん検診を受けることができます。
前立腺がんから自分の命を守り健康を維持するためにも、ぜひ前立腺がん検診を受けるようにしましょう。
令和5年1月