- 前立腺肥大症の最近の話題
- 投稿者:高山泌尿器科クリニック 院長 中島 啓二
中高年になると、排尿に関するいろいろな症状が出てきます。例えば排尿の回数が増える頻尿や夜トイレに起きる夜間頻尿、急に我慢ができないような強い尿意が起こる尿意切迫感、尿が出にくくなる排尿困難などです。男性では、前立腺肥大が原因となっていることが多いようです。前立腺肥大症とは、前立腺の良性腫大により様々な症状を呈する疾患です。ただ腫大の程度は様々で、症状の強さとは必ずしも一致しません。また、前立腺肥大症は良性の疾患で前立腺癌とは別の病気です。
前立腺肥大症の治療で大事なことは、まず生活習慣の改善です。高血圧や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病のある人は排尿症状も強い傾向があります。食事を見直すことや運動の習慣をもつことで症状が改善することは多くあります。 それから、過度の飲水は多尿を引き起こし頻尿の原因となります。排尿をガマンすること(膀胱訓練)は、膀胱に貯められる量を増やすことになり、頻尿の改善につながります。
前立腺肥大症に対するお薬の治療は、新しい薬剤が使用できるようになりました。従来から使われていたα1遮断薬は、前立腺部の緊張を和らげて症状を改善します。ホスホジエステラーゼ5阻害薬(タダラフィル)は、前立腺や尿道の平滑筋を弛緩させることで排尿症状を改善させます。出にくい症状だけでなく、頻尿にも効果があります。硝酸剤との併用は禁忌となっています。頻尿や尿意切迫感といった過活動膀胱の人には、抗コリン薬やβ3作動薬を単独でもしくは併用することもあります。ただしこれらの薬剤は症状を改善させる薬剤ですので、中止すると症状が再出現することになります。前立腺が特に大きい人には、前立腺を縮小させる5α還元酵素阻害薬(デュタステリド)というお薬があります。
尿の出が特に悪い人や残尿が多い人などには、手術を行うことがあります。手術は閉塞を解除するので根本的な治療といえます。手術も新しい方法が行われるようになってきました。長らくは経尿道的前立腺切除術と言って、前立腺を電気メスで切除する手術が主流でした。最近はレーザー蒸散術といって、レーザーをあてて前立腺組織を消し去る方法があります。この手術は出血が少なく、血液サラサラのお薬を飲んでいる人でも中止せずに行えます。
排尿について悩みは、なかなか言いにくいものです。それでも歳のせいとあきらめずに、お近くの泌尿器科にぜひご相談ください。
平成30年5月