- 変形性膝関節症について
- 投稿者:神代病院 整形外科 本松 伸一
高齢者の膝痛の原因として、日常の診察でもよく見られる病気です。
加齢変化などにより関節軟骨が摩耗することに始まり、徐々に骨の変形も伴うようになります。膝の関節軟骨は内側と外側にわかれますが、日本人の多くは内側の軟骨が摩耗し、進行すると膝関節のバランスがくずれて、脚の変形が目立ってきます。(O脚変形のお婆さんを連想すると解りやすいかもしれません。)
【症状】
関節の痛みは、立ち上がり、歩き始め、階段昇降などで出現するのが特徴的です。「正座ができなくなった。」「膝がまっすぐ伸びなくなった。」「膝が腫れて水がたまっている。」との訴えもよく聞きます。進行すると、安静時にうずいたり、長い距離が歩けなくなったりします。
【治療】
まずは日常生活で痛みの出現する動作を控え、過度の負荷がかからないようにする事が基本です。体重の減量も重要です。(5kg太ることは5kgの重りをつけて歩くことと同じです。)大腿部の筋肉(大腿四頭筋)などの筋力増強訓練を行うことも有効です。また、状態に応じ杖や装具を使用することもあります。装具には、靴の中に入れて脚のバランスを改善する足底装具や、膝関節に装着して安全性を改善するものなど各種あります。
必要性は患者さんの状態に応じ、ケースバイケースで決定するものだと思っています。
痛みを軽減する目的で、湿布、消炎鎮痛剤内服、関節内注射などを行いますが、あくまでも根本的治療ではない事を理解してください。
以上の治療にもかかわらず、耐え難い痛みが続き日常生活の障害が大きい場合には、手術を検討することとなります。代表的な手術として人工膝関節置換術があげられます。
これは変性摩耗した膝関節面を切除し、人工の関節を設置する手術です。良好な除痛効果が得られますが、手術をしても正座ができるようになるわけではなく、術後長時間経過すると人工関節のゆるみが生じることもあります。十分理解してから手術を受けるべきだと考えます。
もちろん、骨壊死、脆弱性骨折など、変形性膝関節症以外にも膝痛をきたす病気はいろいろあります。診断にMRIが有用な場合もあります。膝の痛みでお悩みの方はお近くの整形外科を受診してください。(グルコサミンやコンドロイチンを飲むだけでは解決しません。)
令和2年2月