- 夏場に多い泌尿器系の病気
- 投稿者:山下泌尿器科医院 院長 山下 拓郎
夏場になり多くなる泌尿器系の病気に膀胱炎があります。特に女性に多くみられます。膀胱炎は、大腸菌をはじめとする細菌が膀胱の中で増え、炎症を起こしている状態です。男性にくらべ女性に膀胱炎が多い原因は、その解剖学的違い、体の構造の違いにあります。どのような違いかといえば女性はまず第一に尿の出口と肛門が近く、さらに尿道の長さが異なり男性は尿道が14~18㎝あるのに比べ、女性の場合は3~5㎝しかないという違いです。このため菌が膀胱に侵入しやすく、簡単に炎症を起こしてしますのです。
また夏場に多い原因は尿の量が少なくなることにあります。夏場は暑く体の中の水分が汗などで蒸発し、尿の方へ回ってくる水分が少なくなります。本来十分な尿量があれば排尿することで尿路系の細菌を体外に排出するという自浄作用をヒトの体は持っているのですが、尿量が少なくなることでこの自浄作用が弱くなり膀胱に残った細菌が繁殖し、膀胱炎へと進んでしまうのです。
膀胱炎の予防
膀胱炎は気をつければ防げる病気です。次のような点に注意して予防しましょう。
細菌対策
1) 夏場は特に十分な水分をとり、
2) おしっこを我慢しないようにしましょう。
3) 外陰部は清潔に保ち、排便の時は前から後ろに拭きましょう。
全身的抵抗力の保持
1) ストレスや疲労をためこまないようにしよう。
2) 過激なダイエットは避けよう。
<最近のトピックス>
過活動膀胱(40歳以上の男女810万人が悩む「我慢できない尿意」の正体)
過活動膀胱は「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢できず尿が漏れてしまうことがある」などの症状を示す病気です。最近の調査で、とても多くの方がこの病気で悩んでいらっしゃることがわかりました。
日本排尿機能学会の調査によると、40歳以上の男女の12,4%にあたる約810万人の人が過活動膀胱と推計されています。
過活動膀胱は、自分の意思とは関わりなく、膀胱の筋肉(排尿筋)が勝手に収縮してしまう病気ですが、この過活動膀胱の種々の症状に悩まされている人は、水分の摂取を控えたり、トイレにこまめに行くなど気苦労がたえません。外出や旅行を避けて自宅にひきこもりがちになったり、常に尿意が気になって仕事に集中できなかったりと、心の健康や社会生活に影響を及ぼすこともあります。
過活動膀胱は、2002年の国際禁制学会で提唱されたばかりの新しい病気の概念です。まだ知られていないために、多くの人が「年のせいだから・・・」とあきらめているのが実情です。しかし、治療を受けることで、おしっこの悩みを改善して生活の質を高めることができます。早めに、泌尿器科や尿失禁外来などの専門医を受診しましょう。
平成19年8月