一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

たなか耳鼻咽喉科医院 院長 田中 久志

  • 小児の急性中耳炎について
  • 投稿者:たなか耳鼻咽喉科医院 院長 田中 久志

子供が耳を痛がる時、考えられる病気の中で確率が高いのが急性中耳炎です。急性中耳炎は10歳未満、特に3歳以下の幼小児に多く発生し、そのほとんどが風邪をきっかけにしています。

 

Q1:急性中耳炎の原因、主な症状は何ですか。また中耳炎にならないための予防策がありますか。
A1:風邪(鼻炎、咽喉頭炎など)最大の原因です。
鼻やノドの炎症が耳管(鼻と耳をつなぐ管)を通じて耳に及び、中耳に感染をひきおこします。その結果、鼓膜の奥に膿がたまり中耳炎となります。子供の場合、耳管が短く、太く、水平に近いため中耳炎を起こしやすくなっています。
症状は耳痛(乳幼児の場合は不機嫌)、発熱、難聴などです。プールや風呂の水が耳に入ったり、耳垢がつまったぐらいでは中耳炎にはなりません。 中耳炎にならないようにするためには風邪を引かないように健康管理に気をつけることが大切です。また鼻炎の場合、鼻すすりのクセは中耳炎を起こしやすいので止めさせるように注意して下さい。

 

Q2:中耳炎で突然耳が痛くなった時の応急処置について。
A2:以下の方法を適宜組み合わせれば耳痛はひとまず軽減すると思います。
(1)解熱鎮痛剤(坐薬、内服薬どちらでも可)を使用してみる。決められた量であれば平熱で用いても体温が下がり過ぎることはありません。
(2)痛いほうの耳の後部を冷やす。
(3)もし手元に風邪などの治療のために使っていた抗生物質があれば状況によっては併用可。

 

Q3: 切開(鼓膜切開)をすると中耳炎を繰り返すようになるのでは?

A3:そのようなことは全くありません。鼓膜切開の有無に関係なく幼小児の中耳炎は繰り返す傾向があり、治療法によって再発率に差は認められません。
軽度の中耳炎は抗生物質などの内服のみで十分治りますが、重症の中耳炎(鼓膜の腫れがひどく、耳痛、発熱などの症状が著しいもの)の大半は切開したほうが早く確実に治癒します。
切開をしなかったために、治療がながびいたり、鼓膜の奥の膿がなかなか抜けずに難聴になる症例もあるので、治療方法の選択を間違えないようにする必要があります。

 

Q4:治療期間はどれくらいですか。治療中の入浴、運動はいかがでしょうか。

A4:治療期間は、個人差もありますが、おおむね1~2週間かかります。入浴については症例にもよりますが、発熱しない限り治療開始2~3日目から許可しています。水泳以外の軽度の運動も問題ないと考えます。通学、通園も可能です。

 

Q5:2歳の子が中耳炎を頻繁におこしますがこのままずっと続くのでしょうか。将来聴こえが悪くなったりしませんか。

A5:乳幼児の中耳炎、その中でも特に2~3歳までの中耳炎は繰り返す例が多く、親(たいていの場合が母親)も子も大変な苦労と苦痛をしいられています。
反復する中耳炎の背景には、抗生物質の効きにくい耐性菌の出現や、集団保育に伴う風邪の引き廻しなど難しい問題が山積しています。根気よく治療を続けてゆく以外に現時点では方法がありません。
4~5歳までに中耳炎は繰り返さないようになり10歳くらいになるとほとんど中耳炎を生じなくなります。
成長とともに必ず急性中耳炎は克服できますので、途中で治療を放棄しないようにして下さい。中耳炎の罹患回数が多くても、一回一回の治療がきちんと完了していれば、将来聴覚障害が残ることはまず無いと言えます。

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