一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 慢性硬膜下血腫~頭部外傷後に注意しておくべき病気
  • 投稿者:ヨシタケ脳神経外科クリニック 院長 吉武 靖博

 多くは意識障害を伴わない程度の頭部打撲後の1か月前後に発症する病気です。慢性硬膜下血腫は頭蓋骨の真下の硬膜とくも膜の間に血液が貯まる疾患です。薄い被膜を伴う血腫で時間の経過とともに増大してきます。

 
 症状は初期には打撲による頭痛がありますがそれ以外の自覚症状は乏しく、血腫が増大して頭重感、歩行障害、軽い半身麻痺、認知症などの症状がみられ家族が異常に気づき受診される患者さんが多いと思います。頻度は男性、高齢者、酒飲みの人に多い傾向がありますのでこのような条件がそろっていて頭部外傷を受けた方は注意が必要です。

 
 診断は脳CTやMRIが有用です。頭蓋骨の下に三日月型の血腫を認めれば診断がつきます。血腫は片側だけでなく両側に発生することもあります。

 
 先ほどの片麻痺など神経症状があれば緊急手術の対象です。手術ができる病院で脳神経外科医が担当し血腫ドレナージ術を行います。病側の側頭骨に百円玉くらいの穴を開けて穿頭術を行いますのでほとんどは局所麻酔で行われています。血腫は古い血ですから真っ黒い流動性の血腫がドレナージチューブに出てきます。術後の患者さんは、ベット上で頭を上げないように安静にして臥床し血腫が排出できれば翌日にはドレナージを抜去できます。

 
 この病気は脳神経に大きな損傷を伴っていないことが多いため術後の経過は良好です。
再発は高齢者に多く約1~2割にみられますので、しばらくは脳CTやMRIでフォローすることが必要です。また抗血小板剤や抗凝固剤を使用されている患者さんは血が止まりづらい状態ですので慎重な治療を要します。

 
 慢性硬膜下血腫が少量で神経症状がないような場合は、漢方薬の五苓散を処方して保存的に外来で加療します。五苓散の利尿作用で血腫の消退が期待されます。

 
 高齢化が進む社会で慢性硬膜下血腫は増加傾向にあります。元々認知症があるご高齢の方の多くは頭部打撲を受けたことを忘れておられますので注意が必要です。また慢性硬膜下血腫と脳梗塞の脳神経症状は類似しておりますので鑑別診断が必要です。ご心配な方は脳神経専門医へ受診されることをお勧めします。

 

令和2年4月

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