一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

永田皮膚科医院 永田 寛

  • 掌蹠膿疱症について
  • 投稿者:永田皮膚科医院 永田 寛

今回の「病気と健康の話」は、掌蹠膿疱症についてお話します。
掌蹠膿疱症は字の通り、掌蹠(手の平と足の裏)に膿疱(膿を持った小さい水疱)ができる疾患です。通常、膿疱ができる場合は細菌やウイルス、真菌などの病原体の感染症を伴う事が多いですが、掌蹠膿疱症の膿疱は無菌性膿疱と言って病原体は入っておらず、直接触れても自分や他人に感染する事はありません。膿疱は、良くなったり悪くなったりを周期的に繰り返しますが、風邪や疲れなどでのどが腫れたりする場合は悪化する事もあります。
掌蹠膿疱症では掌蹠以外にも爪の症状や掌蹠膿疱症性骨関節炎といった症状が出ることがあります。爪の症状としては、爪の下に膿疱ができ、爪の剥離や角質の肥厚、点状の凹みが見られることがあります。
掌蹠膿疱症性骨関節炎は掌蹠膿疱症の重要な合併症で、首や腰、手首などの様々な関節で炎症が生じ、痛み引き起こします。最も多く見られるのは胸骨と鎖骨をつなぐ関節や胸骨同士をつなぐ関節で見られます。
掌蹠膿疱症の原因は、まだ解明されてない部分もありますが、体の中での免疫(サイトカイン)の異常が考えられています。また、病巣感染(扁桃炎や歯周炎、副鼻腔炎)や慢性的な炎症が悪化因子としてわかっております。特にその中でも喫煙は掌蹠膿疱症の悪化因子として重要であり、喫煙が炎症物質の産生を増加させたり、歯周炎を引き起こす事があります。以前は金属アレルギーの関与が指摘されておりましたが、歯科金属を除去しても改善しない症例も多く、現在は歯性病巣の関連の方が重要視されております。
掌蹠膿疱症の治療についてですが、まずは悪化因子の除去が大事です。具体的には喫煙していれば、禁煙をする事。扁桃炎、歯周炎、副鼻腔炎などの病巣感染がある場合は、その治療を行って頂きます。難治の掌蹠膿疱症の場合は扁桃摘出手術を受けて頂く場合もあります。次に標準的な治療としては、外用療法になります。ステロイドの外用やビタミンD3外用を併用します。外用療法のみで改善が乏しい場合は光線療法と言って、病変部へ紫外線を照射し、炎症のコントロールを目指します。最後に、骨関節炎を伴っている場合や難治な掌蹠膿疱症の場合は、生物学的製剤と言って炎症に関連するサイトカインの働きを弱める薬を使用します。生物学的製剤は生物学的製剤承認施設でのみ治療を受ける事ができ、治療費が高額になるので高額療養費制度が適用される場合もあります。
掌蹠膿疱症は現時点でも全てが解明されている疾患ではありませんが、以前に比べると疾患概念や治療法が確率されつつあります。特に骨関節炎を合併している場合は生物学的製剤の適応になるケースもありますので、症状に悩まれている方は一度、皮膚科専門医へご相談されてください。

 

令和4年8月

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