一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 救急医療の現場から
  • 投稿者:嶋田病院 院長 島田昇二郎

最近、マスコミ、新聞報道などで救急の患者さんの受け入れ病院がなくて、いくつもの病院に断られ、治療を受けるまでに数時間かかったということが救急医療の現場で問題になっています。幸い、小郡三井地区においてはそのような問題はあまり表立っては出てきていませんが、いくつかの小さな問題は現場でも起こってきています。そのひとつが、救急車の利用状況です。
現在小郡三井地区での救急車の出動件数は月平均約200回くらいです。2008年1月から11月末までの累計は2345回となっており、この件数が毎年50件から100件ほど増加しています。同地区には救急車は3箇所に計4台配備されています。119番通報で救急車を依頼して、現場に救急車が到着するまでに約6分かかっています。6分という時間は非常に短い時間と思いますが、救急の現場でいったん患者さんの心臓と呼吸がが停止してしまうと、心臓マッサージや人工呼吸をしないと最初の3分間で25%の方が亡くなり、その後は1分ごとに25%の方が亡くなり6分後には約20%の方しか助けることができなくなってしまいます

 

このように患者さんを病院へ運ぶまでの時間が初期治療にとって大変重要であるために現在、救急救命士制度というものができています。この救急救命士は試験を受け合格した救急隊員がさらに実習病院で一定期間トレーニングを受けたあとに認定され、病院に患者さんを搬入するまでの間に、基幹病院(同地区では久留米大学高度救急救命センターと聖マリア病院)の専門の医師と電話連絡を取りながら、医師の指導の下に心肺停止の状態の患者さんに対し、気管内にチューブを挿入したり、点滴をさしたり、さらにはそこから注射をしたりすることが認められています。

 

最近では交通渋滞や不法駐車などで救急車が到着するのに以前より時間がかかるようになってきているとの報告があります。また、中には救急車を呼ぶ必要がない軽症の方が救急車を利用するために、重症の患者さんが必要なときに救急車がないという問題もおきてきており、住民の皆さんの協力が必要となってきています。 そのほか救急病院でも時間外の診療時間に救急でない患者さんが受診して、重症の救急患者さんの診療がすぐに行えないことが起こってきています。

 

もちろん、救急の患者さんが出た場合、遠慮せずに救急車を使い受診されることは問題ありません。私たちも、地域住民の皆さんが安心して生活できるように医療提供体制を築いて行きたいと考えています。地域の先生方が集まって今後の医療体制のあり方について検討し、救急隊員とも定期的に勉強会を開催しよりよい救急医療のあり方を考えています。医療を提供する側、そして医療を受ける側の健全な関係の下に安心できる医療の発展があると感じています。どうかこれからも地域住民の方々のご意見をどしどしお聞かせください。

平成21年1月

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