一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 最近の早期消化管がん治療について
  • 投稿者:大刀洗診療所 院長 友清 明

まず消化管壁の構造から説明します。表面から粘膜、粘膜下層、固有筋層、奨膜下層、奨膜の5層から成り立っています。早期がんとはがん細胞が粘膜内か粘膜下層にとどまるものをいいます。

私は外科医ですが、以前は食道がんや胃がん、大腸がんは開腹して切除が行われていましたが、最近では内視鏡手術が行われるようになってきました。

最初はくびれのあるポリープ(良性か頂上の一部にがんがあるもの)を、スネア(投げ縄状のワイヤー)を用いて高周波で焼灼し切除するポリペクトミーでしたが、その後はくびれのないポリープや扁平なポリープでも、粘膜内に生理食塩水を注入してポリペクトミーを行えるようになりました。これを内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)と言います。しかしこれの適応は腫瘍サイズが2cmくらい、大きくても3cmくらいまででリンパ節転移のないものに限られていました。

その後もっとサイズが大きくて、陥凹型の早期がんも内視鏡で切除できるようになりました。これを内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)と言います。切除した後は一時的に粘膜が欠損し大きな潰瘍ができますが、消化性潰瘍と違い比較的はやく正常粘膜で覆われます。しかし早期がんであればなんでもEMRやESDができると言うわけではありません。癌の深さが粘膜内か粘膜筋板をほんのわずかに超えた粘膜下層にとどまるものだけです。

前述したようにリンパ節転移がある場合は適応でなく、従来から行われているリンパ節廓清を伴う切除手術が必要です。

EMRやESDは従来のように食道、胃、大腸を大きく摘出しなくてすむので、術後のQOL(quolity of life生活の質)は比べものになりません。

しかしこれは特殊な技術ですので、十分経験をつんだ医師にしかできません。大学病院や大きな病院でも限られた医師が行っています。

 

 

平成19年2月

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