一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 睡眠について
  • 投稿者:あかし心療クリニック 院長 明石 広海

日本においては、約5人に1人が不眠の症状で悩んでいるとされています。さて、睡眠の役割や意味とは実際どのようなものなのでしょうか。皆さんも、心身の疲れを取るために睡眠が大切だということを漠然とはご存じでしょう。もちろんその通りですが、他にも睡眠は大切な役割を担っており、それは主に睡眠中に分泌されるいくつかのホルモンの働きによるものなのです。

睡眠中に分泌されるホルモンとその働き

成長ホルモン
●骨や筋肉を作り子供を大きく育てます
⇒ まさに「寝る子は育つ」!この言葉はウソではないのです。最近の子供は夜遅くまで塾通いだのお稽古ごとだのと、どうしても睡眠時間にしわよせが来てしまうようですが、ぐっすりと寝かせてあげたいものですね。
●成長ホルモンは子供だけのものと思いきや、大人でも分泌されています。しかも、新陳代謝に非常に重要な役割を果たしているのです。よく、睡眠不足になると肌が荒れるとか夜更かしはお肌の美容に良くないとか言いますが、睡眠不足になると成長ホルモンの分泌が少なくなるからなのです。
いつまでも若々しくいるためには良い睡眠が大切なのです

メラトニン
●免疫力、抗酸化作用、解毒作用を促す効果があります
睡眠時間を十分とる人が一般的に健康で老化が遅いのは、メラトニンが充分に働いていることと関係しているのです
ちなみにこのホルモンは睡眠ホルモンとも言われており、このホルモンが分泌されることで末梢血管が広がり体内の熱を外部に放出して体温を下げて私たちの眠りを促します。また、暗くなると分泌が促進され、明るくなると分泌が抑制され貯蓄されます。
⇒アメリカでは不眠症に対してメラトニンのサプリメントが売られているようですが、部屋を暗くして寝れば別にそんなものに頼らなくても自分の体から自然のメラトニンがたくさん出てくるものです。

黄体形成ホルモン
●男性では男性ホルモンを、女性では女性ホルモンの分泌を促します。
より男らしく、より女らしくあり続けるためには睡眠が大切なのです

 快眠のための心得

① 起床時間を一定にして朝日を浴びる
早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じています。つまり、夜ふかしをして遅く就寝した場合でもなるべくいつも通りに起床すること、起床後は早々に朝日を浴びるようにしましょう。朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、夜になるとメラトニンが多く分泌されるようになり、自然な眠気に誘われてスムーズに寝ることができます。
② 昼間適度に運動をする
昼と夜の体温差が大きいほどよく眠ることができます。よって、日中に体を動かして体温を上げていれば、眠りの質も上がります。なるべく体を動かす習慣をつけましょう。
③ 昼寝をするなら午後3時前に20~30分
昼食後~午後3時までの間の昼寝は、夜間の睡眠に悪影響を与えずに日中の眠気を解消します。30分以上眠ると、身体も脳も眠る体制になってしまい逆効果です。
④ 夕食は寝る3~4時間前にすませる
満腹も空腹も熟睡の敵です。空腹の場合は交感神経が働いて目が冴え、満腹の場合は寝ている間も胃や腸が働き続けるため、深く眠ることが困難だからです。
⑤ 室内環境を整える
室内は、夏は25度、冬は15度前後が適温です。湿度は四季を通じて50%くらいが最適です。寝床周りを冬ならピンクやオレンジなどの暖色系、夏ならブルーや緑などの寒色系のパステルカラーで整えると心理的に眠りやすくなるようです。
⑥ 心身をリラックスさせる
交感神経に代わって副交感神経が優位になると、心身がリラックスして眠りにつきやすくなります。副交換神経を優位にするには、部屋を暗くする、ゆったりとした音楽を静かに流す、軽いストレッチなどで体のこりをほぐす、腹式呼吸をする、就寝の30分から1時間前に入浴(40度くらいのぬるめのお湯)する、鎮静効果や誘眠効果があるアロマ(ラベンダー、ベルガモット、カモミールなど)を利用する、などがお勧めです。就寝前にノンカフェインのハーブティ、ぬるめに暖めた牛乳を一杯飲むのもいいでしょう。牛乳には必須アミノ酸のトリプトファンが含まれていて、トリプトファンは睡眠ホルモンであるメラトニンの原料になります。就寝前のカフェイン摂取や喫煙は覚醒作用があるので避けましょう。
⑦ 寝酒は厳禁
寝酒は、深い睡眠を妨げて夜中に目覚める原因となります。また、連用で慣れが生じやすく、急速に量が増え、精神的・身体的問題が起こりやすくなります。

平成21年11月

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