一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 睡眠時無呼吸症候群の話
  • 投稿者:権藤内科循環器科 院長 権藤 秀之

睡眠時間は足りているのに昼間眠くて仕方がないという方はいらっしゃいませんか。あるいは寝ているときに豪快にいびきをかいていると言われた方はいらっしゃいませんか。ひょっとすると寝ている間に呼吸が止まっている睡眠時無呼吸症候群かもしれません。昼間眠たい方や寝るときにいびきをかく方は是非お読みください。

 

〈 どのような病気ですか 〉
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、一般に大きないびきを伴い、睡眠中に何度も呼吸が止まる状態(無呼吸)が繰り返される病気です。
寝ているときの病気ですので、本人の自覚がなく周りの人から大きないびきや呼吸が止まっていることを指摘されて本人が初めて意識することが多いといわれています。

レム睡眠とノンレム睡眠
人は、眠りが浅いとき大脳の活動が起きているときの状態に近くなり「夢」を見ます。この、眠りが浅い時のことをレム(REM; Rapid Eye Movement)睡眠と呼びます。
逆に、夢を見ないほど深い眠りについている時間もあります。この深い眠りについている時間は、ノンレム(non-REM)睡眠と呼びます。
医学的には「10秒以上続く無呼吸もしくは低呼吸が、一晩の睡眠中(7時間)に30回以上、もしくは睡眠1時間に平均5回以上認められかつその一部は、REM睡眠だけでなく、健康な人では規則正しい呼吸が観察できるnon-REM(ノンレム)睡眠と呼ばれる睡眠中にも認める場合」と定義されています。夜きちんと睡眠時間をとったにもかかわらず日中に眠気が襲ってくることで、個人的(身体的)、社会的問題の原因となる軽視できない病気です。
この無呼吸が引き起こす様々な悪影響によって、不整脈を誘発し突然死する危険が高まったり、居眠り運転による交通事故や交通機関のマヒなどの社会的損害が生じることが問題になってきています。

 

〈 どのような人がなりやすいか 〉(睡眠時無呼吸症候群の増悪因子)
肥満・高齢・上気道疾患(扁桃・アデノイド肥大、小顎症、鼻中隔彎曲症、鼻閉)
肺疾患・内分泌疾患(末端肥大症、甲状腺機能低下症、閉経)・神経・筋疾患(Shy-Drager症候群、脳梗塞、進行性筋ジストロフィー)・心疾患・薬剤性(眠剤、安定剤、アルコールなど)
これらに当てはまる人は要注意です。

チャールズ・ディケンズの「ピックウィック・クラブ」の中で少年Joeは高度の肥満でいつも昼間からウトウトし、激しいいびきをかいて眠る。このようないびき、肥満、高炭酸ガス血症、昼間の眠気、右心不全などを示す疾患をまとめピックウィック症候群と報告された。現在この症状は重度の睡眠時無呼吸症候群と考えられる。

〈 どのようにして検査するか
(1) 簡易睡眠ポリグラフ法
携帯型睡眠ポリグラフ器(通常、医療機関から借用する)を用い、無呼吸、酸素濃度の低下の有無を自宅でスクリーニングする検査です。就眠前に器具を装着し、翌朝はずします。その記録をコンピューターで解析すると、無呼吸回数、無呼吸指数、心拍数、動脈血酸素飽和度などがわかり、睡眠時無呼吸症候群であるかないかが判定できます。

(2)終夜睡眠ポリグラフ法
病院に一泊入院して検査をします。重症の睡眠時無呼吸症候群あるいは酸素濃度の低下が著明な患者さんが対象になります。睡眠中の脳波、眼球運動、下顎の筋電図、鼻と口の呼吸、いびき音、心電図、胸、腹の動き、体位、足の筋電図などを総合的に測定し、この結果を見て医師が診断します。この検査により、睡眠時無呼吸症候群のタイプ(閉塞型、中枢型、混合型)や重症度を判定することができます。

〈 治療 〉
睡眠時無呼吸症候群の治療は「生活習慣改善」と「内科的治療」「歯科装具」「外科的治療」に大別されます。

生活習慣改善
睡眠時無呼吸症候群の治療の第一歩は生活習慣改善です。
★減 量
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは肥満を伴っていることが多く、減量することにより、症状が改善することがあります。減量ができても、その体重を維持することが大切です。
★飲酒の制限
アルコールは気道の筋肉を脱力させるためよくありません。就寝前の少なくとも4時間前は飲酒を避けることが必要です。
★精神安定剤の服用の制限
精神安定剤の中にも気道の筋肉を脱力させ、無呼吸を助長させるものがあります。しかし急な服薬中止は反動を来す場合がありますので、主治医にご相談ください。
★禁煙のすすめ
喫煙は、血中の酸素を低下させ、咽喉頭部の炎症をおこし、睡眠中の無呼吸に悪影響を与えます。肺がんの予防など他の健康のためにも禁煙をおすすめします。

内科的治療(CPAP療法)
CPAP療法とは専用のマスクを介して気道内に陽圧をかけ、気道の閉塞を防ぐことにより無呼吸を取りのぞく療法です。
気道を広げるための必要な圧力は患者さんごとに異なりますので、医療者が患者さんの睡眠状態を診ながら必要最低限の圧力を決定します。特に中等症~重症の睡眠時無呼吸症候群の方はこのCPAP療法が有効です。

歯科装具による治療
歯科装具は、睡眠中に装着し、舌や下あごを前方に固定することで舌の後方の気道スペースを広げ気道の閉塞を防ぎます。歯科装具は、比較的安価で携帯に便利なため、利用される患者さんが増えています。こうした歯科装具は、睡眠障害の専門医と連携をもつ経験豊富な歯科医師によって作成してもらうことが必要です。

外科的治療(手術による治療)
子供の睡眠時無呼吸症候群の場合は、アデノイドや扁桃の肥大が原因であることが多く、手術が第一の選択になります。また、大人の場合でも、気道閉塞の原因がアデノイドや扁桃の肥大であることが明らかな場合や、他の治療方法では、うまく治療できなかった時などは、耳鼻咽喉科医による手術が必要となることがあります。

睡眠時無呼吸症候群ではないかと心配な方は一度内科(呼吸器科 循環器科)の先生にご相談ください。

平成18年2月

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