一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 糖尿病の話題
  • 投稿者:本間病院 副院長 本松 利治

1.まえがき
・世界中で糖尿病が増え続けいています。日本でも増え続け、2007年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人が890万人で糖尿病の可能性がある人が1320万人だそうです。
10人に2人が糖尿病か予備軍です
糖尿病の原因には、遺伝因子と生後に影響する生活環境因子があります。悪い生活環境因子は、過食、運動不足、肥満、ストレスと加齢などで、糖尿病を発病したり悪化させます。美味しいご馳走を沢山食べ、快適な乗り物に乗り、ストレスが多い生活をする。現代の生活習慣病と文明病そのものですね。戦前の日本人や貧しい地域の人達にとって、先進諸国の生活は王様の暮らしでしょう。
・自然界の生き物たちや野生の動物には食べ過ぎも運動不足や肥満もありません。自然界では、やっと生きていくだけの食べ物の範囲内でしか生きていけません。自然界の生物たちと人口増加と高齢化を続ける人間とどちらが異常でしょうか?

2.糖尿病とはどのような病気
・糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの働きが不足して血糖が高くなる病気です。
・糖尿病の種類は主に、インスリンが出なくなる1型糖尿病とインスリンの働きが悪くなる2型糖尿病があります。日本人の糖尿病は約9割が2型糖尿病です。
・血糖が高い状態が続くと、腎臓や眼や神経の障害や脳・心臓・手足の動脈硬化症などの病気(合併症)が起ります。糖尿病の治療の目的は合併症の予防と言っても過言ではありません。

3.糖尿病の診断
・空腹時血糖126以上や糖負荷試験の2時間値または随時の血糖が200以上の高血糖と、同時に測定したHbA1c(ヘモグロビン・エーワン シー、国際基準値)6.5%以上または糖尿病の症状(口渇、多飲、多尿、体重減少や網膜症)があれば、糖尿病と診断します。
・2010年から、糖尿病の新しい診断基準にHbA1cが加えられ、またHbA1c値が国際基準値に変更されました。HbA1c(JDS値、従来の値)+0.4%=HbA1c(国際基準値)です。
・糖尿病発症時には空腹時血糖より食後血糖が早期に増加します。検診で空腹時血糖が高い場合は、食後血糖を測ると早期発見に役立ちます。

4.糖尿病の予防
・肥満、過食、運動不足、ストレスなどの悪い生活環境因子を改善すると、糖尿病の予防や治療になります。理屈は簡単ですが、食欲を我慢し生活習慣を変えるためには努力が必要です。生活習慣の改善は“一病息災”になります。健康のために頑張りましょう。

5.糖尿病の治療
・食事療法や運動療法などの生活改善と薬物療法がありますが、生活改善は安全で経済的な糖尿病治療の基本です。最近多くの血糖降下薬が開発されましたが、まだ薬だけで糖尿病の治療はできません。
・治療の目標は、体重と血糖値とHbA1c値を用います。毎日体重を測り、標準体重を目指します。良好な血糖コントロールは、HbA1c6.9%以下、空腹時血糖130以下と食後2時間血糖180以下です。HbA1cは過去1~2ヶ月間の平均血糖値を示すため、安定した目標になります。また、眼や腎臓などの合併症を予防するための分かりやすい目標として「HbA1c7.0未満」があります。
・食事療法の基本は、①適正なエネルギー量、②栄養素のバランス、③規則正しい食生活です。必要なエネルギー量は、標準体重と各個人の運動量で決まります。栄養素のバランスは、総カロリーの50~60%を糖質、15~20%を蛋白質、20~25%を脂質で摂取します。食生活は、朝・昼・夕の一日3食がお勧めです。
・「糖質制限食」が話題になっています。糖質制限食とは、三大栄養素のうち糖質をとくに制限する食事療法です。具体的には、ご飯・パン・麺類などの主食を抜いて副食だけを食べます。摂取カロリーは制限せず標準的な摂取基準を用います。糖質制限食は、血糖降下や体重減少の効果がありますが、長く続け難く長期的な健康や病気への影響を検証する必要があると言われています。
・運動は、単にエネルギーを消費するだけではなく、筋肉の糖代謝を良くし血糖を下げます。筋肉は自分の意志で鍛えることができる唯一の臓器です。運動は10分~20分でも頻回に長期間続けると有効で、「いつでも、どこでも、ひとりでも」できる運動を工夫しましょう。
・薬物療法は、色々な作用を持つ経口血糖降下薬やインスリン注射薬が開発され血糖コントロールがやり易くなりました。薬物治療では薬が効き過ぎて低血糖を起こす危険性があります。低血糖の症状は、異常な空腹感、あくび、倦怠感、冷汗、ふるえや意識障害などです。低血糖は有害で危険ですから、常に低血糖への注意と準備が必要です。
・知覚障害や血流障害や感染が合併すると、足先に難治性の潰瘍などが起こります。時々足をみてもらいフットケアを受けましょう。

6.まとめ
 最近の話題を入れ糖尿病のお話をしました。お役に立てば幸いです。糖尿病の早期発見・早期治療は健康や一病息災につながります。三浦雄一郎さんのようにエベレスト登頂は無理ですが、“健康”を目標に頑張りましょう。

平成25年8月

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