- 背骨の圧迫骨折について
- 投稿者:にのみや整形外科 院長 二宮 康明
我が国の平均寿命はますます延長する傾向にあり、世界でも有数の長寿国となっています。高齢者が増えるにつれ骨粗鬆症の方を診察する機会も増えてきました。骨粗鬆症は特に高齢の女性に多く見られ、お薬をのんでいらっしゃる方も多いかと思います。
骨粗鬆症では骨がもろくなったことが原因で骨折を起こすことが多々あります。その中でも背骨の圧迫骨折は日常の診療の中でよく遭遇する骨折のひとつです。背骨の圧迫骨折を起こす原因のほとんどは軽微な外傷です。例えば転んだとか椅子から滑り落ちたなどです。なかにはけがをしていないにもかかわらず圧迫骨折を起こしてしまう方もいらっしゃいます。ちなみに骨粗鬆症が原因で圧迫骨折を起こす場合、胸椎(背中の背骨)の中位レベルと、胸椎と腰椎(腰の背骨)の境目付近で多発します。
圧迫骨折の患者さまには日常の診療でよく遭遇しますが、みなさん歩いてお見えになり、お話を聞くと「数日前に転んでしりもちをついて腰が痛くなった」とか、「畑仕事してから腰が痛くなった」とおっしゃいます。このような場合背骨のレントゲンを撮影すると圧迫骨折がいくつも見つかることは珍しくありませんが、どれが今回圧迫骨折を起こした背骨なのかはレントゲンだけでは判断が難しく、MRIを撮影して判断することになります。MRIを撮影して今回圧迫骨折を受傷していることがはっきりしたら、コルセットを作り3ヶ月ほど胴体に装着していただきます。コルセットがギプスの役目をするわけです。圧迫骨折を治療せずにほったらかしにすると骨癒合せず頑固な腰痛が残ったり、背骨の潰れが進んでしまい背中が曲がってしまったり、あるいは骨折したかけらが脊髄の方にずれてきて脊髄に当たって足に麻痺がでることもあるので注意が必要です。
圧迫骨折を治療する場合、骨粗鬆症の検査も行い骨粗鬆症の治療も並行して行う事になります。軽微なけがで背骨が圧迫骨折を起こすということは骨粗鬆症になっているということです。骨粗鬆症にも軽度な方から重度の方まで個人差がありますが、背骨のレントゲンで圧迫骨折が何個もある方や骨密度が極端に低い方は骨折リスクが非常に大きいので、このような方では骨密度をしっかり上げる効果のある注射の治療をする方も増えてきています。骨粗鬆症に自覚症状はありません。ある日突然骨折がおきます。そして骨折がひとつふたつと増えて行くにつれて介護が必要な体に近づいていきます。骨粗鬆症が原因で骨折が起こった場合きちんと治療を行い次の骨折を防ぐことがとても大事です。そのため70代以上の女性の方で腰が痛くなった場合は整形外科専門医を受診されることをおすすめします。
令和4年7月