一般社団法人 小郡三井医師会

病気と健康の話

  • 脳卒中
  • 投稿者:丸山病院 院長 丸山 泉

脳の血管の障害によって起こる疾患を脳血管障害といいます。また、中気、中風ともいいます。「卒」という語が「突然に来る」ことを意味するので、脳の疾患で突然に起こる病気を広く脳卒中といいます。
これらの言葉の意味はそれぞれ若干異なるのですが、現在使われているのは「脳卒中」と「脳血管障害」です。前者は症状主体の、後者は原因主体の名称と考えてよいでしょう。どちらにせよ、多くの場合片まひや言語障害などの後遺症を残すため、本人はもとより家族にも多大の労苦をもたらします。したがって発症の予防こそが最も大切です。
皆さんに特に関係があるのは脳梗塞、頭蓋内出血、一過性脳虚血、高血圧性脳症です。出血はまた脳内出血、くも膜下出血、慢性硬膜下血腫に分けられます。梗塞は脳動脈の閉塞により当該領域の脳に虚血性の壊死を生じてしまったものです。脳内出血は脳の実質内に、くも膜下出血は脳をとりまく三つの膜の一つ、くも膜下に出血したものです。高血圧性脳症は血圧の顕著な上昇によって起きる急性の脳症です。
詳しい分類の話はさておき、現場で最近気付くことをいくつか述べておきます。
1.脳卒中には何らかの前ぶれがあることが多く、自分の身体が教えてくれている情報をどう健康管理に生かしていくかです。例えば目まい、ろれつが回らない、ボタンが留めにくい等の症状があれば、軽くて一過性に終わりすぐ回復したとしても、直ちに医師の診察を受けてください。脳梗塞についていえばこのような症状が事前に起こることが多く、この段階できちんとした診断と治療を受けておけば脳梗塞までに至らずにすむことも多いのです。
1.最近の脳卒中の中に、すでにかかりつけの医師から注意するようにいわれ、内服薬等の指示を受けていたにもかかわらず、勝手に治療を中断したために発病するケースが少なからずあります。民間療法を盲信したために医師からの服薬指示を守らず、脳卒中に至った数例を知っています。日本のように医療の先進国での脳卒中発症のひとつの型として、医師と患者の信頼関係不足が考えられるようです。内服や通院を中断したり転居したりするときには、必ずかかりつけ医へ相談してください。私ども医師も十分な説明に心掛けます。
1.高齢化社会の到来とともに、動脈硬化が基礎にあり、突然ではなく穏やかに発症していく多発性脳梗塞で、本人も気付いていない場合が多くなっています。たまたま受診されたときに脳のCT検査を行ったら複数の小さな病変が見つかることがあります。この場合も小さな症状が経過中に出現していますので、この情報をうまくつかむことです。高齢化社会を前に皆さんが一番気にされていることは「寝たきり」といわゆる「ボケ」でしょうが、そのかなりの原因が脳血管障害です。これらのことに注意をしていけば発症の可能性は減ってくると思います。脳卒中は予防の可能性の高い疾患なのです。

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